27 ページ28
いくら可能性を聞いていたとて、実際に目にすると俄かに信じがたくなる。彼らもまた、得体の知れぬものを見るかのように呆然と立ち尽くした。
彼女は見慣れた兵服を身につけているが、左腕は二の腕半ばで裾がちぎれている。そして何よりも、目元から頬にかけて走る巨人化の跡が全てを物語っていた。
彼女は紛れもなく、巨人の項から出てきたのだ。
ユーリは無性に目を背けたくなった。
彼女は確かに四年前、目の前で息を引き取った——と思われた。だが実際はそうではなかった。憎きジークの策略によって、運悪くもマーレの手に渡ってしまった。彼女は死んだと疑いもしなかった。
それでも一ヶ月前、予期せずポンと現れた彼女。純粋に嬉しかった。どんな
それなのに今、無性に、……怖い。
「っ…………」
あそこに見えるのは本当に副団長なのだろうか。目元にはっきりと巨人化の跡を携え、項の中から出てきたのは本当に——……。
「まずい！巨人がっ」
ジャンの声に我に帰る。目線を上げると、項から出てきた彼女に周囲の巨人が狙いを定めていた。巨人同士で取っ組み合う奇行種でも、目の前にヒトがいれば話が変わるのだろう。彼女はまだ腕を肉体から引き抜こうともがいている。
無意識に声を上げていた。
「急げ！副団長を護衛するぞ！！」
ユーリがそう呼んだのは意図的だった。
ユーリに続いて、ジャン、ミカサ、アルミンも一瞬固まりはしたが、即座に飛び立った。ガスを最大出力させ、全速力で彼女の元に向かった。その間にも巨人が一体、また一体と立ち上がり始めている。
もはや一刻の猶予も残されていなかった。
「一人二体だ！同時にやるぞ！！」
「「了解っ！」」
ユーリの背を見つめながら、ジャンが叫ぶ。自然と各々の役割は分配された。
それを背で聞きながら、ユーリは一点に集中した。
もう手を伸ばし始めている巨人もいる。一方の彼女はまだ腕を抜けずに苦戦していた。小さな顔に焦りも見える。なんらかのイレギュラーでも起きたのだろうか、と懸念が脳裏をよぎるが、それはあとだ。
気づけば背後にいた3人も三方に散り、巨人の背後を取っている。相変わらず優秀な後輩たちだ。
ユーリはスッと短く息を吸った。
作戦実行の合図は――。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 808人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふゆ(プロフ) - めっちゃ引き込まれるお話ですね！！！ほんとに更新が楽しみです！ (12月2日 0時) (
レス) @page38 id: 484893ce06 (このIDを非表示/違反報告)
せい - 最近イッキミしたもので！最高しか言えません！！応援します！ (11月28日 4時) (レス) id: 9598d06351 (このIDを非表示/違反報告)
あい - とってもおもしろくて一つの物語として楽しんでいます。続きのお話が楽しみです！ (11月22日 19時) (レス) @page32 id: fbec67f27a (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - ドキドキしながら読ませてもらいました。作者様のペースで良いのでこれからのお話も楽しみに待っています！！ (11月22日 17時) (レス) id: c807065baf (このIDを非表示/違反報告)
高橋 - 更新待ってます！！頑張ってください！！ (11月12日 17時) (レス) id: 2973651174 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年8月1日 8時
