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蒸気で霞む視界の向こうには、超大型巨人の大群。人類の絶望など意に介さず、鈍く重い地響きで絶え間なく街を揺らしていた。
「……終わりだ」
そこにジャンの掠れた声が落ちた。
「まさか、壁外人類を皆殺しにするつもりとは思わなかったが、…奴らが消え去れば全ての遺恨も消え去る」
彼の膝の上には気を失ったマーレの少年兵。その目元にはくっきりと巨人化の跡が残っている。
ユーリの頭に一瞬だけベンの顔が浮かんだが、すぐに打ち消した。無駄な期待であることは、アルミンとミカサの表情を見れば一目瞭然だ。
「俺たちの生存を脅かしてきた敵も全てぺしゃんこだ。まっさらな更地だけを残してな。……海の外の連中が一番恐れていたことが起きちまった。俺たちを悪魔だと決めつけて、皆殺しにしようとしたばかりに…っ。つまりこれは…、外の連中が招いた結果であって、俺たちにはどうすることもできなかった。そうだろ」
その声音はどこか、ユーリの胸の内同様、そうであってほしいとも聞こえる。実際、そう考えた方が楽だ。
正直、このまま三日間くらい眠りこけたいほどには、もう疲れている。マーレの急襲だけではない。この二千年続いた巨人を巡る戦争に疲れ果てているのだ。
楽な方に転がり落ちたいと、いっそ死んで全てを終わらせてしまいたいと、不謹慎にもベンを羨んでしまいそうなほど、心が叫んでいることに気づいているから。
だが、無意識の領域でまだ息をする本能がそれを許さない。楽になりたくても、この島のためだとしても——。
「でも、これは、度が過ぎている…っ。前代未聞の大虐殺だ」
この島以外の大陸が、壁外の全人類が消え去るなんてことがあっていいわけがない。それを許していいわけが。
「…じゃあ、止めるか？エレンを」
「っ…………」
「エレンは、安楽死計画で俺たちを去勢しようとするジークを拒み、始祖の力を維持するため、ヒストリアを犠牲にすることを拒んだ。つまり、エレンは……、俺たちを守るために壁外人類を犠牲にした」
搾り出すように言葉を交わすジャンとアルミン。そばに立つミカサとコニーも静かに耳を傾け、彼らからほんの少しだけ離れた場所にユーリが腰を下ろして顔を伏せている。ユーリはただ、ジャンとアルミンの問答を聞いていた。
地鳴らしでさえ、それを掻き消すことはできない。
「この大虐殺の恩恵を受けるのは、俺たちだ」
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ふゆ(プロフ) - めっちゃ引き込まれるお話ですね！！！ほんとに更新が楽しみです！ (12月2日 0時) (
レス) @page38 id: 484893ce06 (このIDを非表示/違反報告)
せい - 最近イッキミしたもので！最高しか言えません！！応援します！ (11月28日 4時) (レス) id: 9598d06351 (このIDを非表示/違反報告)
あい - とってもおもしろくて一つの物語として楽しんでいます。続きのお話が楽しみです！ (11月22日 19時) (レス) @page32 id: fbec67f27a (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - ドキドキしながら読ませてもらいました。作者様のペースで良いのでこれからのお話も楽しみに待っています！！ (11月22日 17時) (レス) id: c807065baf (このIDを非表示/違反報告)
高橋 - 更新待ってます！！頑張ってください！！ (11月12日 17時) (レス) id: 2973651174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年8月1日 8時
