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『君なら大丈夫だ。俺の娘、なんだからな』
『君は、俺みたいな堅物になるなよ』
こんなところで弱ってる場合じゃない。自分の中の悪魔に負けてんじゃないわよ、バカ。
目を閉じて鼻から深く息を吸い込み、そして口から吐き出す。思考を埋め尽くす邪念を追っ払うかのように全ての息を吐き切る。
「…やるか」
そう言ってカッと目を開いた彼女の顔に先ほどの弱さは見えない。
「地鳴らし……。なんとしてでもエレンとジークの接触は避けないと…」
悪魔という蓋に押さえ込まれたそれは、彼女を呑み込もうと着実に膨らんでいる。奥底で押し上げられる蓋を必死で押さえながら、デスクに積み上げられた書類をかき集めた。
＊
ちょうど同じ頃——。
『こういう役には、多分�狃臠岫瓩�ある。役を降りても誰かがすぐに代わりを演じ始める』
——頑張れよ、ハンジ。
「うっ…、ぐっ、ぐぎぎ…っ、くっ……」
調査兵団本部。問題の四名を懲罰房へ送るよう命じ、会議室に一人残ったハンジ。
「………疲れた」
一昔前では想像できないほど、ハンジの声には覇気がない。だが、今や調査兵団の団長だ。
「いや、」
そして彼女の相棒だ。その切り替えの速さは、今や彼女に匹敵するものである。
「まだ調べることがある」
ハンジもまた、自分が止まっている場合ではないとその身体を奮い立たせる。上に立つ者として、それぞれ別の重い荷物を背負い直し、この残酷な世界に立ち向かう。
例えそれが自分の心に正直なものでなくとも、偽りモノだとしても、それでも彼女たちは進み続ける。
「やることはまだたくさんだ」
亡き者たちとの約束を、守るために——。
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年6月6日 8時
