Name of Love ―悪魔の子編Ⅰ-2―《進撃の巨人》 (ページ47)

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誰も、何も、言えなかった。彼女が背負っているものに比べれば、なんてことないはずだった。

でも、そんなことない、なんて上辺だけの言葉は、きっと彼女は望んでいない。一回りも歳下の部下に、何の躊躇もなく頭を下げる上官など、そういない。

真摯に頭を下げる彼女を責める気持ちなど、一ミリもない。

アルミンはスッと立ち上がり、ゆっくりと寝台に足を進めた。彼女のそばで膝を折ると、そっと彼女の肩を掴み、その頭を上げさせた。

「ルアナさん、」

顔を上げたルアナの目尻は申し訳なさそうに垂れている。アルミンは落ち着いた声で言った。

「……僕は今でも、あなたに打つべきだったと思います。あなたが戦場にいてくれたらと、きっとここにいる誰もが一度は思ったはずです。……でも、だからと言って、兵長を恨んだことはありません。だって生きてなきゃ、何もできないから。もしこれでルアナさんが死んでしまっていたら、僕はもっと苦しかったと思います。でもこうして僕もあなたも生きている。世界は残酷なままですけど、でもそれで、充分じゃないですか」

最後は笑って見せたアルミン。この言葉に嘘はなかった。

誰も悪くないんだ。エルヴィン団長が死んだのも、ルアナさんが歩けなくなったのも、——エレンが離れて行ったのも。そりゃ、最初はどうして僕なんだと思うこともあったけど…。でも——……。

『私たちは、生き残ってしまった意味を、他の者を死なせてしまった意味を作るために生きるの。』

生きていることには意味がある。そう教えてくれたのは他ならぬ彼女だから。

「僕は、後悔するつもりはないと言った兵長を信じています。だから、僕があなたを責める理由はありません」

「っ…………」

「私もっ……！」

アルミンに感化され、ミカサも思わず立ち上がりルアナを見つめた。

「私も…、違うと思います。兵長はルアナさんのこと、そんな風に思っていないし…、私もっ、違う、から…。だからっ！…だから、エレンの本心は別にある。ルアナさんが、謝ることじゃないです。」

ミカサも自身の持てる精一杯の語彙力で思いの丈を伝えた。