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ブラウス氏の気遣いのおかげで104期生たちも頭が冷えたのか、今は各々紅茶をすすっている。
しばらくカップがソーサーに擦れる音だけが響いた後、コニーが静かに口火を切った。
「……それで、俺たちはここで事の成り行きを見てるだけか？」
「アルミン、巨人の力でここから出ることはできるか？」
ベンが一抹の希望をかけてアルミンに問うが、返ってきた答えに意外性は何もなかった。
「できません。この街を吹き飛ばすことしか…。超大型巨人はそんな器用なことはできない。エレンの、ようには……」
アルミンがチラリとミカサを見上げる。どこか微妙な空気が流れる中、今度はジャンが口を開いた。
「で、お前は何でエレンにタコ殴りにされたんだ？」
「え…、そうなの？」
巨人の力のせいだろう。傷ひとつないアルミンの顔に、ルアナは思わず驚き声を上げた。
「…ハンジさんと向かったレストランで鉢合わせて……、その時に……」
歯切れ悪くルアナに説明するアルミン。ジャンが
「そろそろ話してもいいだろ」
これ以上は誤魔化せないと判断したのだろう。アルミンがふっと目を落とし、呟くように言った。
「……ミカサを言葉で傷つけたから。僕から手を出して、殴り返された」
これには全員が言葉を失った。
エレンが、ミカサを……？そしてアルミンを、殴った——？
耳を疑いたくなるような話だった。
「は？」
「ミカサを傷つけたって、どんな風に」
「それは——」
「やめて。もういい」
ミカサの硬い声にアルミンが口を噤む。しかしジャンは食い下がった。
「いや、良くねぇよ。どう傷つけたのか話してくれ」
「おいもう充分だろジャン。奴は完全にクソ野郎になっちまったってことだ。一番大事だったはずの二人を意味もなく傷つけてちまうほど、もう我を失っちまった」
「奴が正気だとしたら、何の意味もなくそんなことをするとは思えない。何か、そこに奴の真意があるんじゃないのか？」
ジャンの指摘は予想外だったのだろう。当事者のアルミンとミカサも目を見張っている。
じゃあその真意とは一体——。
それぞれが考え込み、一度沈黙になったその傍らで、ここまで静かに見守っていたルアナが小さく震えた声を漏らした。
ジャンたちが振り返ると、彼女は片手で顔を半分隠し、愕然とした表情を浮かべていた。
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年6月6日 8時
