Name of Love ―悪魔の子編Ⅰ-2―《進撃の巨人》 (ページ34)

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83 -The Violence- ページ34

「知っての通り、ザックレー総統が殺された今、兵団内やこの壁内の情勢は不安定な状況にある」

ウォール・マリア南部のシガンシナ区——通称「はじまりの街」。

「だが貴様ら訓練兵には関係ないことだ」

訓練兵団・南訓練地教官キース・シャーディス。その前に整列するは、109期の訓練兵たちだ。

「109期訓練兵団は予定通り、巨人襲撃時のシガンシナ区防衛訓練を行う！」

覇気のない顔が並ぶ。それもそうだ。もう巨人は襲ってこない。それが壁内における共通認識だ。

案の定、訓練兵の間から不満の声が漏れ出す。

「…今更剣で巨人の項を斬りつけるなんてな」

「もう巨人なんて襲ってこねぇだろ。敵は壁外の人間なんだぞ」

「それよかもっと銃火器の訓練してエルディア軍を作らなきゃいけないって親父も言ってた。時代はとっくに変わったってのに…。もう古いんだよ、シャーディス教官は」

「……………」

中にはイェーガー派を支持するようなことを、わざと聞こえる声で言う訓練兵もいた。

「みんな、エレン・イェーガーにエルディアを導いてもらいたいはずだ。非情な決断も下せるような強い指導者に」

スルマと呼ばれた兵士の主張にざわざわとする訓練兵たち。

その中で一人、誰の会話にも加わらず、姿勢を崩すことなく一点を見つめる兵士がいた。彼はスルマの言葉に、亡き家族の姿を思い浮かべ、小さな声でつぶやいた。

「強い指導者、か………」

そしてまるでこの機を図ったようなタイミングで、そのイェーガー派が彼らの前に現れ、兵団支部を占拠したと告げた。

あれはたしか、ハンジ・ゾエ——調査兵団の団長だ。四年前のあの時はまだ分隊長だったはずだ。

後ろ手に拘束され、イェーガー派によって銃を突き付けられている女の上官を彼はじっと見つめた。

イェーガー派の兵士がキースに銃口を向ける。

「これより我々の指示に従い、動いてもらいます」

「身の程をよくわきまえているようだな、フロック。銃口でも向けない限り、貴様らのような小便小僧など誰も相手にしないと考えているのなら、それは確かだ——」

バン——！

銃声だ。訓練兵たちはたちまち怯み上がる。

キースの右足のすぐ隣に、銃弾の穴が空いた。