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「どうして…、片方だけ…っ、少ない、んですか……っ」
「っ、！」
「……………」
ユーリの指摘に、ベンも大きく息を呑んで目を張る。
ただルアナだけが静かにユーリを見上げていた。その瞳に光は、ない。
「ルアナさん……！」
ユーリが思わず一歩ルアナに迫ったその時。
コンコン。
「ルアナ司令、失礼いたします」
こちらの返事を待たずに扉が開いた。
「………………」
「っ………、」
ユーリが顔を歪めた先には、白い布を腕に巻いた数名の調査兵と憲兵を引き連れたイェレナが立っていた。イェレナは机上に並ぶワインボトルを一瞥すると、薄っぺらい笑みをルアナへ向けた。
「司令、我々と同行願いますか」
静かな声の中に、抑えきれない何かが見え隠れしている。その作り笑いの奥を見透かすかのように、ルアナは目を細めた。
「ちょっと待て。おいイェレナ！お前なにして——」
「ユーリ。」
珍しく声を荒らげてイェレナに突っかかるユーリをルアナが制した。
あぁ、まるで4年前のデジャブを見ているかのような。
ルアナはイェレナを見つめ返す。
「それは、強制ですか？イェレナ」
それに対し、イェレナもまた目を細めて言い返した。
「分かり切ったことを聞くなんて、あなたらしくないですね。司令殿」
冷ややかな声が行き交う執務室は異様な空気で満ちている。先に目線を外したのは意外にもルアナの方だった。
ルアナは小さく息をつく。
「わかりました。従いましょう」
「ちょっ、ルアナさんっ！」
焦ったように彼女の名を叫ぶユーリ。対しルアナは平然とした態度を崩さない。
「どの道、我々にそれ以外の選択肢はない。そういうことですね？」
ルアナはちらりとワインを見やってからイェレナを見上げた。
イェレナはこれみよがしに手を左胸に当て、小さく頭を下げた。
「ご協力、感謝いたします」
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年6月6日 8時
