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いや、ちょっと待て。だとしたら、なぜリヴァイから同じものが送られてくる。リヴァイと一緒にいるのは、調査兵だけだ。
……調査、兵………。
「ね、ねぇ……」
声が、微かに震える。
「108期、って確か……」
「あ、えっと…、さっきの子はナディア・フランツェスカ。今年入ったばかりの新兵です」
「っ、！」
ルアナは大きく息を呑んだ。
決まりだ。イェレナからとリヴァイからの同じワイン。加えてここに持ってきたのは、調査兵団の新兵。そしてエレンとフロックら100名の兵士の脱獄。もう、疑いようがない。
このワインは今、リヴァイら特別班の元にもある。ジークとイェレナの魔の手が、すぐそこまで迫ってきている。
そもそも、リヴァイがこれを送ってくるはずがないという確固たる理由が他にもある。
ルアナは暴れる心臓を宥めるように息を吐いて、やっと口火を切った。
「これは、リヴァイから送られてきたものじゃない」
「え………」
「このワインには、…ジークの脊髄液が仕込まれている可能性が高い」
ルアナの言葉に、ユーリとベンは度肝を抜かれた。
「どういう、ことですか？」
「恐らく、目的は兵団の制圧。イェーガー派だ」
「そんなっ……」
言葉を失うユーリ。ベンも開いた口が塞がっていない。
「ベン。補給兵の3名は今どこに？」
「あ……、えっと、ピクシス司令の元です」
「あ、そっか…。それじゃあ動かせないか」
一刻も早くリヴァイに伝えなければならない。伝えてどうにかなるものではないが、情報はあって越したことはない。でも無条件に信頼できる兵士は限られている。一体どうすれば——……。
頭を抱えるルアナ。
その様子を見つめるベンがぐっと拳を握りしめた。
彼女は今頭の中を巡る考えを、一から十まで彼らに説明した訳ではない。だが、彼女の部下として5年、そして副官として支え続けて4年。その月日を、ベンもただ過ごしていたわけではない。一番近くで彼女を見て、そして支えてきたのだ。
彼女が今何をしようとしているのか、それに何が必要で、今何が足りないのか。ベンは彼女の表情で、それを汲み取った。
「ルアナさん、」
ベンの声音の変化に気づいたのか、ルアナが顔をあげた。
ベンには何の迷いもなかった。
「俺が早馬を出します」
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年6月6日 8時
