44 ページ45
「君と、焦燥感を共にしたつもりだった。でも君がなぜ単独行動に出て、この島を危機に追い込んだのかが分からない。もう、ヒストリアはどうなっても良かったのかい？」
「だったら何なんですか」
「えっ？」
やっとエレンが口を開いたかと思えば、恐ろしく静かにこちらへ迫ってくる。鉄格子はその役割を果たしていない。
「ハンジさん、あなたに何ができるっていうんですか」
「うぐ…っ」
その静かな声とは裏腹に、エレンは鉄格子越しにハンジの胸ぐらを力任せに掴み上げた。
襟元が引き上げられて詰まり、ハンジは思わず呻き声を上げる。
「教えてくださいよハンジさん…っ！」
「くっ…、」
ドスの効いた声と圧倒的な男女の体格差に流石のハンジも顔が引き攣った。
「他のやり方があったら教えてくださいよ！！」
ついにあの眩い閃光まで散らし始めたエレンにハンジの焦りは増す。が、彼の手を振り切れない。
ハンジの頬に嫌な汗が伝ったその時、身内でさえ体が縮み上がりそうなほど怒気に満ちた声がハンジの背後で響いた。
「——エレン。その手を離しなさい」
鋭い語気と目線でエレンを制したのは他でもない。
「っ、！…ルアナ、」
「っ………」
「上官への暴行罪で懲罰を引き伸ばすわよ」
「…………っ」
「これ以上、兵規違反の懲罰を引き延ばされたくなければ、その手を離しなさい。」
振り返らなくとも分かる、彼女の恐ろしい気迫。まるで煙のように静かに、されど確実に伝わる威圧感に、ハンジは思わず固唾を呑んだ。
流石のエレンも今の彼女に逆らうことはできないのだろう。ハンジの胸ぐらを掴んでいた手から力が抜けたので、ハンジは咄嗟に鉄格子から距離を取り、胸元を隠した。
「っ、エレンのエ ッチ！！未だに反抗期かよっ！…バカ！若者！！」
その時にだいぶ取り乱してしまったことは言うまでもなく、先ほど厳しい表情を浮かべていたルアナも「相変わらずの語彙センスね、ハンジ…」と呆れる始末だ。
それだけ、ハンジは今のエレンに怖気付いてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「進撃の巨人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ああ - 今まで読んだ中で一位になるくらい面白かったです！ (9月9日 9時) (
レス) id: d425432768 (このIDを非表示/違反報告)
Kawamata0912(プロフ) - めっちゃ愛してます この作品を。ありがとうございます。 (5月6日 22時) (レス) id: ddf77202c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年5月6日 11時
