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「はぁ………」
司令室に大きなため息が落ちる。
ルアナの目の前には積み上げられた書類の山。そこから一枚を手に取り、ルアナは両手を額にやった。彼女が見下ろす書面には、完成が近い港の進捗報告が記されている。
世界から隔離されていたパラディ島に初めて港が開かれる。これもイェレナの指示するものだった。
彼女の指示は的確だ。鎖国状態だったこの島の経済力を世界の水準まで引き上げるのに、この工事が必要不可欠なのはルアナも理解している。それもマーレの工兵なしには進まない。
話はこれだけではない。武器の製造や装填も、他国への抵抗力としてパラディ島に足りないものばかりなのだ。
しかし島が発展していく度、ルアナの胸が大きく疼く。
このまま彼女の言いなりに、進めてもいいのだろうか。地鳴らし、なんていう殺戮兵器で世界を脅すことでしか、エルディア人を守る術はないのか。
これじゃあ本当に、パラディ島は世界を恐怖に陥れる悪魔じゃないか。
だが、ここに話し合いの余地を模索するなど、甘ったれた考えを持ち合わせているわけでもない。そもそも話し合う議題がないのだ。
マーレや世界がパラディ島に抱いている印象に誤解も何もない。彼らの言う通り、エルディア人は巨人に化ける怪物だ。私たちは怖くありません、なんて弁明したところで一体誰が聞く耳を持つというのか。
もちろん理解してくれる人はゼロではないだろう。実際、義勇兵との交流は上手くいっていると報告が上がっている。
しかしそれが何かを動かすほどの力になるには時間が足りていない。
「だからと言って、どうやって時間を稼げっていうの……」
世界がパラディ島に攻撃を仕掛けてくるのも時間の問題だというのに、どうやってその時間を稼げと——。
抜け出せない思考に陥りかけたところで、執務室の扉がコンコンと音を立てた。
「はい、」
「私、ハンジだ。ちょっといい？」
「あ、うん。どうぞー」
やっほ、とハンジが片手を上げて入ってきた。
ルアナが司令になってから、ハンジは必ずノックをしてから入ってくるようになった。副団長時代には一切していなかったのだが、流石にルアナが調査兵団の外にまで階級が上がってしまったせいだろう。
もう慣れはしたが、初めは驚いたものだ。
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ああ - 今まで読んだ中で一位になるくらい面白かったです！ (9月9日 9時) (
レス) id: d425432768 (このIDを非表示/違反報告)
Kawamata0912(プロフ) - めっちゃ愛してます この作品を。ありがとうございます。 (5月6日 22時) (レス) id: ddf77202c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年5月6日 11時
