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「脇坂第一中出身!佐藤太郎です!希望ポジションはレフトです!よろしくお願いします」
土の香り漂うグラウンドに球児たちが並び一人一人自己紹介をする。その声はどこか緊張で固くなっており対面に立つAまでも緊張してきてしまい思わず背筋が伸びる
そんな様子を横目に先輩マネとなった夏川と梅本は自分達もそうだったなぁと懐かしさに互いに見やってこっそり笑みを零す
たかが自己紹介ではあるが名門で強豪、部員数が3桁になる青道野球部は規律を重んじ厳しさは折り紙付きだ。輪を乱すようなことはできない
何より、緊張の中それでも自分をアピールしようと声を張り上げる1年生の邪魔にはなりたくないという先輩心がすでに芽生えているからぐっと歯を食いしばり堪える。そんな様子に成長をしみじみと感じている最年長マネがいることには気づいていない
「金丸信二!松方シニア出身!希望ポジションはサードッス!よろしくお願いしゃっす!」
そんなこんなで1列目の自己紹介が終わった。希望ポジションも程よくバラけていて順調だなと続いていた流れのままに視線を左から右に移動させた時に、事件は起きた
「あー!!こいつ遅刻したのに列に紛れこもうとしてるぞおおお!!」
聞き覚えのある声がどこからともなく張り上げられ一瞬にして注目をかっさらった
「え、何?」
突然の声に肩を震わせて皆が注目する方に目を向ければ真新しい練習着に身を包んだ少年が一人
「っとごめんねーA」
「!?み、御幸先輩…?」
「しっ、俺が今来たこと内緒な」
爽やかな笑顔で人差し指を口元に寄せる仕草は中々に様になっている。こうやって無意識に女の子たちを虜にしていくのかもしれないが、ことAにはあまり効かないようで
「…あの子と一緒に遅れてきたんですよね?」
「えーそんな事ないよー?」
「初日から遅刻とはいい度胸だな」
まだ春なのに夏の日照りより暑そうな怒りを背負った片岡監督の低い声が聞こえてきて思わず口を噤む。視線の先にはそんな監督にしどろもどろになっている1年生だろう少年が1人
彼だけじゃないと声を出そうとしたがそれは御幸に口を塞がれてしまいもごもごとした音にしかならなかった
「朝練が終わるまで走ってろッ!!!」
「全てが裏目にいいいい!」
そして罰走を言い渡され悲痛な叫びを上げた。初日からなんとも可哀想なことだ
「ヒャハハ!あいつばぁか!おもしれぇな」
それを倉持が声を上げて笑いAの頭上からも笑い声がきこえた
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みけいぬこ(プロフ) - まうふちさん» コメントありがとうございます!3年生と沢山絡ませて青春していきたいと思います! (9月12日 16時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
まうふち(プロフ) - 夢主ちゃんめっちゃ可愛いですし面白いです!お気に入りさせていただきました!更新楽しみにしてます! (9月10日 5時) (レス) @page14 id: d0a3c1950d (このIDを非表示/違反報告)
みけいぬこ(プロフ) - あやかさん» あやか様コメントありがとうございます!何度も読んでいただけて嬉しいです!こちらは平穏に青春していきたいと思います(*ˊ˘ˋ*)またぜひ読みに来てくださいませ (6月21日 9時) (レス) id: cde2af9807 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 初めまして!全ての作品何度も読み返すほどみけいぬこさんの作品が大好きです!大っ好きなダイヤのAの作品が始まっていて、思わずコメントしてしまいました!みけいぬこさんのペースで頑張ってください!気長に待ってます! (6月20日 18時) (レス) @page8 id: cac696b1d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みけいぬこ | 作成日時:2023年6月10日 3時