【ヒロアカ】Vergiss-mein-nicht (ページ14)

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「10倍かよ……」
待機してる側からそんな声が漏れる。下で行われてる競りにみな釘付けであった。大柄な男に拘束され身動きの取れない少年。司会の男の紹介の通り思わず見惚れる美しさがある。……かと言って少年を買いたいと思う趣味は持ち合わせていない

「……」

しかしこの会場にはその趣味全開のくそ共しか居ない。案の定彼らの眼鏡に叶っているようで最後の競りの少年に会場は騒然。スタート価格もそこそこに高く、それにもかかわらず順調に額を上げていった

人の命がこんな金でやり取りされる環境が許されていいはずがない。上からなんの隔たりもなくみえるからブルーサファイアと称される瞳がどんどん曇っていく様がわかる。恐怖に絶望に染められていく

「8000」

そうして、先程誰かが呟いたように10倍の金額が彼につけられた。他に誰も名乗り出る者はいない

ガンガンガンと喜びのゴングを鳴らし少年の落札が決まった

ザザッ

「奇襲部隊、突入だ。煙幕投下後各自よろしく頼む」

合図がきた。イレイザーヘッドは突入後すぐ捕縛布で司会の男の確保。ついでステージの男の対処である。最後にちらと少年の立ち位置を確認する。その場から動かないでくれよ、と願ったのと煙幕が落とされたのは同時だった

ボン！

「な、なんだ！！？」

何かが爆ぜる音とさっきと違う意味でざわめきたつ会場内
ついで呼吸がしづらくなり思わず咳き込む

「ゴホッゴホッ……あっ…痛っ…ｹｯﾎ」

咳き込んだ傍から肋骨が悲鳴を上げ痛みに蹲る。その間も空気が澱んでいるのか呼吸がしづらく息苦しい。鼻呼吸に変えても麻痺した鼻は臭いを感知しないのに喉に変なイガイガが苦しく思わず咳き込む…そうすると肋骨が傷んでの無限ループ。酸素が上手く回らずその場にフラリと倒れ込む

「(息、が……できな…っ！)」

もう何が何だかわからなかった。息はできないし胸は痛いし口の中は血の味がするし鼻は利かない。辺りは白い煙に包まて何も見えない。耳だけが逃げ惑う足音や悲鳴、そして争うような音を捉える……もう何が起こってる。これ以上巻き込まないでくれ

「(このま、ま……死ぬ…)」

くらりと世界が回る。酸素が上手く取り込めない。絶対肋骨がどこかに刺さってる…微かに喉がヒューヒュー鳴っている

「おいっ、生きてるか！」

急にどこからか声が降ってきて体を持ち上げられる
頼むから、動かさないでくれ

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