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やっとの思いで吐き出した答え。
それは、断りの言葉だった。
答えは、混乱する頭の中でも決まっていたのだ。
最初から、告白された瞬間から。
……いや、むしろその前から。
この光景を女の子たちに見られたら多分刺されるんだろうなぁ、なんて、必死に思考を逸らしながら、彼に、センラくんに視線を戻す。
ーーセンラくんの表情は、驚く程に平常運転だった。
「まぁ、そらそうなるよなぁ」
へらりと顔を綻ばせるセンラくんに、もう一度「ごめん」と小さく呟く。
「そんな何度も振らんとって!?」と面白おかしく場を和ませるセンラくんが、私は不思議で堪らなかった。
「……なんでそんなに、笑っていられるの? 私が言うのもなんだけど……失恋、したのに」
本当に、私が言う台詞じゃない。
それでも、どうしても気になったのだから許して欲しい。
私の問いに、センラくんは一瞬きょとんとした表情になり、そしてすぐにいつもの
「だって俺、まだ諦めてへんし?」
「……へっ?」
今度は私がきょとんとする番だった。
無意識下に飛び出た間抜けな声。
シャーペンをくるり、と一回転させ、「さて」と何かを切り替えたセンラくん。
「ちなみに、なんでダメなん?」
切り替えが早すぎる。
とてもじゃないけれど着いていけない。
くらくらし出す頭を必死にクールダウンさせて、私は答えようとする、けど。
声は出なくて、ぱくぱくと唇が動くばかり。
それを見兼ねてか、センラくんが口を開く。
「彼氏がおる、とか?」
「……ううん、いない」
聴取形式なら、まだ大丈夫だ。
答える合間合間に、ゆっくりと少しずつ心と息を落ち着けていく。
「じゃあ好きな人」
「いない、よ。そんな人」
「……じゃあ、なんで?」
少しずつ、センラくんの声色に「不思議」が混じり始めている。
言うべきなのか。
言っても、大丈夫なのだろうか。
ぎゅ、と、机の上のシャーペンを持つ手を痛い程握りしめる。
そして数秒後。
ーー苦悩の末、私はふっと、手の力を抜いた。
「もう、決めたの」
いいや、言ってしまおう。
混乱で自暴自棄になっていたところもあるけれど、心のどこかで「センラくんなら大丈夫」という思いがあったのが大きかった。
ぽつりと、独白のように吐き出された言葉に、センラくんは黙って耳を傾けてくれる。
「もう、誰も好きにならないって……決めたの」
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acotatta(プロフ) - とてつもなく面白いです...!!夢主ちゃん可愛いし描写うますぎませんか?! 応援してます〜!! (2019年9月18日 0時) (レス) id: 8be6c7c599 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年9月16日 18時