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「センラくんは、どうして?」
せっかく振ってくれた話題を続けようと返した問いに、すぐに返事は返ってこなかった。
不思議に思って顔を上げれば、そこには曖昧な表情で手を止めたセンラくん。
初めて見る彼のそんな表情に、私は小さく首を傾げる。
……いや、普段から関わってる訳ではないからよく分からないけれど。
「あー……」
表情同様曖昧な返事に、私はひとつの答えが浮かぶ。
「もしかして点数稼ぎ?」
一般的に、執行部や委員会に所属している人はその分点が高く付くように見られる節がある。
それも決して間違いではないし、確かに高く付く時もあるけれど、実際問題一般生徒とそんなに大きな差は出ない。
が、微かな差なら確かに付くため、それを狙って執行部に所属する人がいるのも事実。
……けれど、センラくんがそれ目当てで入ったようにも思えない。
自分で言っておいて、「それはないな」と否定している自分がいた。
「あー、いや、点に興味はないで」
ほらやっぱり。
と、ひとりで勝手に納得。
「じゃあ、どうして? 何となく?」
「うー……ん」
どうにも様子がおかしい。
やけに歯切れが悪い。
聞いてはまずいことだっただろうか。
「無理に言わなくてもいいよ」
そう言いかけたのを、彼の言葉が遮った。
「……もう、ええかなぁ」
「え?」
もう、いい。
彼の口から紡がれたその言葉の真意はどこにあるのだろう。
少なくとも私にはそれは見つからない。
首を傾げる私に、センラくんは笑った。
普通の男子高校生が、ここまで大人びた表情をできるものなのかと、少し驚きを感じる。
「知りたいんよな?」
「え、う……ん」
半ば反射的に頷く。
センラくんは左手で頬杖をつき、右手でまたシャーペンを回しながら、にこりと微笑みーー言った。
「小鳥遊さんが、いたから」
ーーポキリ、と、紙に当てていたシャーペンの芯が折れて飛んでいく。
カチッ、と、壁掛け時計の秒針が音を刻む。
設定室温に達したのを感知したクーラーが、一時的に送風を停止する。
「……え?」
センラくんが言った言葉を口に含んで、
喉につっかえて下りないその言葉を、私は必死に飲み下す。
(私が、いたから?)
理解が進まなくて、私は縋るようにセンラくんを見た。
ふっ、と笑いシャーペンを回す手をピタリと止めたセンラくんは、続けた。
「好きやったよ、ずっと」
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acotatta(プロフ) - とてつもなく面白いです...!!夢主ちゃん可愛いし描写うますぎませんか?! 応援してます〜!! (2019年9月18日 0時) (レス) id: 8be6c7c599 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年9月16日 18時