好きになんてならない。【センラ】 (ページ15)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:38,948 hit

＊ページ15

「嫌だなぁ」という嫌悪の言葉とともに、何度目かの溜息を吐き出そうとして、気付いた。

「……あれ、でも明日明後日って学校使えない……よね？」

そう。
今週末は、近隣学校が集まって行われる会議が何かで、会場に選ばれたうちの学校に先生方が大量に集まる日なのだ。

つまり、生徒は校内に入ることが出来ない。
……あれ、これは詰んでしまったのでは。

軽い絶望を感じていた私に届いたのは、「あぁ、せやったね」というセンラくんの声。

「なら俺ん家でする？」

ーーそして、全身を余すことなくカチコチに硬直させる、そんな言葉だった。

ぴた、と足が地面に吸い付けられたかのように止まる。

「……え」

どうやら声帯は固まっていなかったらしい。
いや、固まる寸前といったところか。

締め出されたかのように飛び出た小さな掠れ声に、私は自力で我に返った。

「え、いや、なんで」

「え？」

我には返っても、動揺は抜け切っていなかったようで。
口からテンポよくぽんぽんと出ていったのは、まさに単語の羅列。

意味を成さないーー訳ではないけど、とても他人には理解し難いであろうそれを聞いた隣の彼は、私より１、２歩前で足を止め、首を傾げた。

「嫌？」

「……嫌、とか、そういう問題じゃない、よ」

言葉と一緒に硬直が解けて、軽くなった脚を動かして、彼を追い越して。
くす、と小さな笑い声が聞こえたのは、きっと私の気の所為だ。

「まぁ、放課後終わらへんかったらまた考えたらええよ」

「……うん」

センラくんの家に行った、だなんて、バレたら私の平凡な学校生活は終わりだ。

絶対に終わらせないと。
……とは思いつつも、今手元にある資料の量は、その決意に対して残酷過ぎて。

重い気持ちを胸中に携え、顔を上げて２階への階段を下りかけてーー

「っ、あ」

ーーキュッ、と上履きを慣らして、一段目を下りることなくその場に踏みとどまった。

糸に引かれたかのように、そんな私につられて、センラくんも階段を下りかけていた足を静止する。

「どしたん？」

「あ……ううん、なんでも……」

苦笑、嘘。
今更になって気付いてしまったのだ。

(このまま教室入ったら、多分……)

センラくんと二人で教室に戻れば、センラくんガチ勢の人達によく思われないのは分かり切ったこと。

(やだな……)

……私は、目立つことなく、平凡な生活を送りたいのに。

この人の隣は、それが叶わない。