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拾/もうひとつの故郷 ページ38

気付けば、森を抜けていた。
うらたくんが言うには、あと半刻(はんとき)も歩けば村が見える、とのことだった。

十数年ぶりの思い出の地に行くことが出来る。
至極光栄なことなはずなのに。


「……」


ふる、と震える肩は、その地へ向かうことへの躊躇いをはっきりと表していた。

他の誰でもない、自分がよく分かっている。
今の私は、棲みついたばかりの罪悪感に蝕まれていた。


「……なぁ、A。もしかして体調悪かったりする?」

「えっ……」


いつの間にか、隣を歩く坂田くんがこちらを見ていた。

その声につられ、一番前を歩くうらたくんも、その隣を歩く志麻くんも、坂田くんの近くのセンラくんも、みんながこちらに視線を移す。

集まった視線がまた、蝕む罪悪感を加速させた。

きっと、みんなは信じてくれているのだろう。
……私が、あの日の「やくそく」を覚えていることを。


「そんなこと、ないよ。大丈夫」


また、笑顔を嘘で貼り付ける。


ーーお城でも、作り笑いをしている時の方が多かった。

笑っていないと、お父様を心配させてしまうから。
笑っていれば、お父様も少なからず表情を和らげてくれていたから。

だから、作り笑いには自信のある方だった。

……けど。


(あぁ、また……この表情)


私に向けられた四人の歪んだ表情に、ちくりと胸に痛みが走る。
訝しみ半分、寂しさ半分といったその顔色は、私にとって刃でしかなかった。

ーーみんなには、作り笑いも敵わない。

再会してみて、改めてそれを思い知った。

幼い頃のたった一週間の触れ合いも、私たちにとって、濃密過ぎる信頼関係を築くには十分過ぎたのだ。

あの頃の私にとっては幸せだったこの関係は、今となっては秘密ごとの阻害にしかならない。

……違う。
今でも、この関係は幸せで心地良いはず、なのに。


(……ごめん、なさい)


相も変わらず胸中を侵す罪悪感に、心の中で謝罪を零す。


「そ、か。……無理せんとってな!」


にこ、と浮かべられた坂田くんの笑みを皮切りに、私たちの足は再び動き始めた。

ぎこちない笑みが、視界に張り付いて消えない。


それから逃げるために、私は必死に昔のことを思い浮かべていた。

光景は、はっきりと覚えているのに。
指を契った感触も、ありありと残っているのに。

約束の言葉だけが、雑音がかって思い出せない。

早く、思い出さなければ。

みんなとの約束。
あの桜の下で交わした、夏の日の約束。


ーーはやく、はやく。

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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2020年7月11日 23時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あういえお - ぐへへ...((え、すげー...みんな言葉使いが...おしとやか...(?) (2019年7月25日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
もうふ - きゃぁぁぁぁ(( 好き。(笑) (2019年7月23日 22時) (レス) id: bc132d7752 (このIDを非表示/違反報告)
- 続きがきになる・・・更新頑張ってください! (2019年7月22日 20時) (レス) id: 7ea13ff707 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すんばらしい!更新頑張ってくださいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! (2019年7月22日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年7月21日 16時

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