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玖/思い出して気付く ページ32

「A、何かありました?」

「え?」


夏の生温い風が吹き抜ける朝。
木々に陽の光を遮られ、やや薄暗くもある森の中。

身支度を整えている最中、私の顔をひょいと覗き込んできたセンラくんに、少し不思議そうに問いかけられた。

蜜色の双眸が、ぱちりぱちりと瞬きながら私を捉えている。

呆気にとられた声を漏らし、同じように瞬きを繰り返しながらその黄色い水晶の輝きを見つめ返していると、背後で明るい声が跳ねた。


「俺も思った! なんかすっきりした顔しとるで、A」


振り返った先には、ざっくりとした手付きで着物を整えている坂田くんの姿。

肌が触れそうな距離。
思っていたよりも距離が近くて、つい後退りしかけてしまう。


「……ちょっと、ね?」


「ね?」の声と同時に志麻くんに目をやると、丁度こちらを向いた彼の目に私の視線は絡め取られた。

熟れた沼酸塊(ぬますぐり)の実のような、深い紫苑(しおん)の瞳。

八重歯をちらりと見せて笑った志麻くんは「おう」と楽しそうに、そして悪戯に答えてくれた。


「えー! なになに!? Aとまーしぃ何かあったん!?」


その笑みに分かりやすく釣り上げられた坂田くんが、ばたばたと両手を荒ぶらせて志麻くんに詰め寄る。

あまりにも激しく動くものだから、元々雑駁(ざっぱく)にしか整えられていなかった着物がさらに乱れてしまっている。

その様子を、私はただただ苦笑と共に眺めていた。


「全く、志麻くんは本当に油断も隙もないですね」


気が付くと、隣に人影があった。

私より幾分か高い位置にある顔を見上げれば、その整った顔が緩やかな笑みを浮かべているのが分かる。


「センラくん」


半ば反射的にその人の名を呼べば、センラくんはゆったりと視線をこちらに落とし、控えめな笑みでそれに応えた。

大人びたその笑みは、とても同年代だとは思えない程に精巧なもので、息を呑む程に美しい。


「……センラくんは、聞かないの?」

「何がです?」


我ながら要領を得ない質問だったなと思う。

それでも、恐らくセンラくんなら既に真意を汲み取っているだろうに。
わざわざ聞き返してくる辺りがセンラくんらしい。


「私と志麻くんの間に、何があったのか」


センラくんの顔に浮かぶのは、変わらずの微笑み。

ーーが、その笑みに妖しい色が混ざったのを、私は見逃さなかった。


「聞いて欲しいんですか?」

*→←〇



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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2020年7月11日 23時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あういえお - ぐへへ...((え、すげー...みんな言葉使いが...おしとやか...(?) (2019年7月25日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
もうふ - きゃぁぁぁぁ(( 好き。(笑) (2019年7月23日 22時) (レス) id: bc132d7752 (このIDを非表示/違反報告)
- 続きがきになる・・・更新頑張ってください! (2019年7月22日 20時) (レス) id: 7ea13ff707 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すんばらしい!更新頑張ってくださいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! (2019年7月22日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年7月21日 16時

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