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「A!」


そんな張り上げ声と共に、勢いよく玄関の引き戸が開いたのはその数分後のこと。

手拭いを桶の水で再び湿らせていた私はびくっと肩を揺らしてしまう。

ちゃぷん、と、涼やかな音で桶の中の水が跳ねた。


「坂田、少しくらい静かに……」


引き戸を引いた坂田くんの後ろで、うらたくんが呆れたように何か言おうとして途中で諦めた。

坂田くんが、話を遮って民家の中に入って来たから。


「A、大丈夫? 痛いとこない? 平気? 元気やんな?」


腰を下ろし、ずいずいと顔を近付けながらそう問う坂田くんに苦笑い。


「大丈夫……です、はい」


その返事に長い長い息を吐いた坂田くんは、ちょうど息を吐き切ったであろうところで、小さく呻くように「ぐえ」と声を漏らした。

ずり、と少しだけ後ろに退く坂田くんの身体。

その背後には、坂田くんの着物の襟元を引っ掴んで引っ張ったうらたくんの姿が。


「起きたばかりの奴の近くで騒ぐな」


改めて坂田くんに注意を促したうらたくんが、私の方に視線をやりーーなんだか少し気まずそうに、そっと視線を滑らせた。

民家の中に、しん、と静寂が広がる。

何か話したい、という気持ちはあるのに、こうして改めて揃うとどうしても言葉が出てこない。

「ぁ……ぅ……」と、本当に微かに、聞こえるかどうかすら怪しい戸惑いの声が出るだけで。


(こんなの、嫌だ)


話したい。

その気持ちに嘘をつきたくない。


ぎゅ、と手拭いを強く握り締めた私は、喉の奥の奥から声を振り絞って、たった一言。


「……えっ、と……久しぶり、です……ね?」


何故か疑問形になってしまった語尾に、四人は一瞬ぽかんとした表情になり。

ーー直ぐに、堪えられない、とでも言いたげに表情を崩した。

けらけらと、民家の中に高らかな笑い声が響く。


「……っ、笑わないでよ……!」


かあっと熱くなる頬を隠して、ぼそぼそとそんなことを呟いた。

目尻の涙を拭ううらたくんが、くつくつと喉の奥で笑う。


「いや、悪い。なんで敬語なんだろうって思って」

「久しぶり過ぎてどうしたらいいか分かんなかったの! ……もう、私頑張ったのに」


そっぽを向くと、再び、特に反省してなさそうな「悪い悪い」という声が聞こえる。

ちら、とそちらを向けば、さっきとは一変優しげに笑う四人の姿。


「改めて……久しぶりだな、A」

「……うん、久しぶり」


視線が絡んだ私に、うらたくんが微笑んだ。

ー翡翠との記憶ー→←伍/中途の村にて



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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2020年7月11日 23時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あういえお - ぐへへ...((え、すげー...みんな言葉使いが...おしとやか...(?) (2019年7月25日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
もうふ - きゃぁぁぁぁ(( 好き。(笑) (2019年7月23日 22時) (レス) id: bc132d7752 (このIDを非表示/違反報告)
- 続きがきになる・・・更新頑張ってください! (2019年7月22日 20時) (レス) id: 7ea13ff707 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - すんばらしい!更新頑張ってくださいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! (2019年7月22日 14時) (レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星奈 ふゆ | 作成日時:2019年7月21日 16時

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