【文スト】純粋かも知れない素敵帽子とヤツガレの恋愛奮闘記【中原中也】【芥川龍之介】【短編集】

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「サラッと褒めて呉れるのは、私も中也兄のこと大好きだし、嬉しいよ？けど限度ってものがあるじゃん」


ピタリ

と私の言葉を最後に

中也兄が喋らなくなった

室内で音を奏でるのは

スプーンがルーに潜って行く音だけ

如何したのだろう？

何かあったのだろうか？

と心配に思い

隣を向くと

顔を手で覆っている中也兄が

赤くなった顔を隠している心算なのなろうが

林檎のように赤い耳が丸見えだ

私はニヤッと微笑い

中也兄に詰め寄る

すると

中也兄は逃げるようにして後ろへ退がり

今度は腕で顔を隠す


「何々？中也兄照れてるの？私に大好きって云われて」

中也「そ、ンなンじゃねェし…。咖哩の湯気で火照ッてるだけでッ」

「声が震えてるよー？図星なんでしょ」

中也「ち、違ッ……」

「好き」


そう云うと

中也兄の顔は更に赤くなって行く

矢っ張り好きって云われて

恥ずかしがってるんじゃないか

普段私から云わないから

好きって云われるのは耐性が無いんだろう

私は新しい玩具をみつけた子供のように喜んで

好き

大好き

と何度も

何度も云う


「好き。好きだよ。夕焼け空みたいに綺麗な髪も。アクアマリンみたいな蒼色の瞳も。何時も明るく接して呉れるところも」

中也「や、めろ……」

「私が落ち込んだ時、静かに話を聞いて呉れるところも。苦手なものを克服出来たら、一緒になって喜んで呉れるところも」

中也「ぅ…」

「真面目なところも。向日葵みたいな笑顔も」

中也「あぅぅ……」

「照れた顔も、全部、ぜーんぶ大好きだよ！中也兄は？私のこと大好き？」

中也「なッ…！？今云わせるのかよ…ッ」


早く早くっ

と

沢山大好きと云われ

茹で蛸になりそうな中也兄を急かす

中也兄は

十数秒の葛藤の末

大きく口を開く


中也「…だ、大好きに決まッてンだろ！！！！！！」

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