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「…分からないです」
分かりたくないというのが本心かもしれない。
彼の熱を帯びた視線は本来私に向けていいものではないのに何故こうも彼は好意を向けてくるのだろう。
「例え意味が分かっても、私は恐らくそれに応えられませんよ」と返す。
だから、もう諦めろという意味で言った。グラスに入ったカクテルを飲み横目で彼を見ると不機嫌そうにこちらを見てきた。
「それただお前が現実見てないだけだろ、ちゃんと前見て向き合え」と言われた。
現実、現実ねぇ。私はこれが現実なのかすら分かってない。実は夢でしたーなんてオチを何処かで期待してるぐらいだ。
夢なら夢で好き勝手やればいいのにそんな度胸もない。クソつまらねーな私は。
「逃げればお前も相手も辛いこと分かってんだろ」
知ってる、だけどね。前見るなんてことが出来ないんだよ、臆病だから。
知らないと目を逸らして逃げて、それでも追ってくるのがお前だろ。他にも居るけどさ。
「…応え方が分からないし、それにその好意は間違いだと思います。それとそれを受け取る資格ないです」
「お前、面倒臭いな」
そんなの私が一番知ってるから言わないでよろしい。カクテルを一気に飲み込み喉が熱くなる。
同じ物を頼んで軽く松田陣平と言い合いになった。松田陣平の心情が全く理解できない。
何杯目か分からなくなってきた頃、呂律が上手く回らなくってきて松田陣平に何か言っても自分でも聞き取れないほどだった。
松田陣平も飽きたのだろう「はいはい」といった風にあしらわれた。なんなんだ、あと頭がふわふわする。
「…お前もう飲むなよ」と止められグラスを取られた。残りを飲まれてしまい「もう出るぞ」と腰を抱かれた。
ふらふらな私が見るに耐えなかったのだろう、お勘定を払いタクシーを拾ってそれに乗せられた。
心地よく揺れる車内にウトウトしながら松田陣平の肩に頭を置いた。酔っ払いのやってることだから気にしないでくれ。
そろそろ酔いと眠気で意識が飛びそうだったが車は止まって外に出る。あれ、ここどこだろうと思ってたらそのまま手を引かれて何処かのマンションに入った。
ただ連れてかれるだけで精一杯でその場で寝てしまいそうだった。とある部屋の前で止まりガチャリと音がした後部屋の中に入れられる。
その部屋は松田陣平の匂いがしたのをよく覚えている。
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寝子 - ええ、あ、続きは!? ずっと待ってるんですが (2月18日 21時) (レス) @page28 id: 57e090ea6a (このIDを非表示/違反報告)
猫 - 続き待ってます (1月4日 10時) (レス) @page28 id: 964519cfd9 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (6月9日 0時) (レス) @page28 id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - 更新待ってます (5月25日 16時) (レス) id: 8ef7621f8b (このIDを非表示/違反報告)
わかめ - 続きが気になって仕方ないです!更新楽しみにしてます! (2022年9月20日 17時) (レス) id: 979aaf8679 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おふとん | 作成日時:2019年8月7日 1時