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それから彼女とはよく話すようになった。
彼女のコロコロと変わる表情も、一緒にいると落ち着く雰囲気も、柔らかい空気も。
全てを美しく思うようになった。
今まで目にしたものの中で、1番綺麗だった。
だが不思議なことに、彼女といるとよく胸が痛くなった。
病気ではない。
ただ、この感情の名を見つけられずにいる。
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ユウ「ヴィル先輩、こんにちは。」
「あら、今日はなんだか子ジャガが大分マシになったわね。」
ユウ「えっへー。そう思います?
ヴィル先輩の方が100万倍美しくて可愛いですけどね」
そうにんまりと口角を上げる彼女に、アタシは無意識に胸辺りの布をギュッと握る。
ユウ「ヴィル先輩……。もしかして恋してます!?」
「は?」
ユウ「今、恋する乙女の顔してましたよ!
人間、恋すると可愛くなったり格好良くなったりするじゃないですか。
ヴィル先輩が恋するとどのくらい綺麗な顔するのかと思ってましたけど…、やっぱりとても綺麗ですねー」
そうやって頬を染めて笑う彼女に、アタシは不思議と心のモヤが晴れたような気がした。
そうか、これが恋か。
アタシは貴方に恋をしていたのね。
「…"ユウ"。」
ユウ「…え」
「恋をしていると言っても、アタシは別に同性愛好きじゃないのよ。
この学園に女の子は1人しかいないわけだし…。
どういう意味か、分かるかしら?」
そうやって今度はアタシがニンマリと笑う。
数秒経った後、目の前の彼女はカァァッと林檎のように赤くなると、そのままガッチリと固まってしまった。
ユウ「…わ、私のことが…その、すすす好きってことで…良いのでしょうか………」
「言わせないでちょうだい」
ユウ「あ、あぁあ」
「え」
ユウ「わぁぁあぁあぁぁぁあああ!!!!」
そのまま奇声を上げながら走り去る彼女を前に、アタシは呆然とその場に取り残される。
「…は?」
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作者名:いのさき。 | 作成日時:2020年10月4日 12時