２９.Like dead ページ29
目が覚めたら、知らない天井が見えた。
いや、知らなくない。
ここは、保健室か…。
体が妙にダルいが、なぜだか無性に起きたくなり起き上がる。
刺されて、死んだと思っていたけど…。
「良かった、生きてた…」
体から力が抜けたように、布団の上で膝を抱える。
窓辺に置いてある花は、きっとヴィル先輩が置いてくれたのだろう。
私が好きな花だった。
そうだ。ヴィル先輩と話が出来る時間まで、少し出来ることをしてしまおう。
トイレとかトイレとか。
地面に足をつけると、ひんやりとした空気がつま先から全身に広がり、思わず身震いした。
そのとき、またもふわりと風が吹いた。
それはカーテンをも持ち上げ、隣のベッドのカーテンもふわりと舞う。
カーテンが風に舞った。
その光景は、普通の方ならなにも気にする事はないが、私はあるものを見てしまいそれに目が釘付けになる。
ベッドで寝ていた人物。
焦げ茶色の髪に
何年日の上に出ていないのか、血色の悪い真っ白い肌。
「…あ……あぁ…」
口から情けない声が出た。
フラフラとそれに足は向かい、ベッドでガクンと足の力は抜けた。
震える手で、その人の頬に手を当てる。
驚くぐらい、冷たかった。
死んでいるのか、と思うほど。
「ｯｯなんで……こんなところにｯ…」
私は、長年鏡で向き合ってきた顔をジッと見つめた。
そう、隣のベッドで死んだように寝ていたのは
.
紛れもない、死んだと言われていた私だった。
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作者名：いのさき。 | 作成日時：2020年10月4日 12時
