【BL】家政夫を攻略するのは難しい。②【オリジナル】 (ページ11)

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十仕事ページ11

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コトリとほとんど音を立てずに、目の前へ皿が置かれる。

見た目よし、匂いよしの和食たちだ。

久世の運転により、連れてこられたのはなかなかな風格をもつ和食料理屋だった。

双葉の久世に関する食事の知識は、朝はパン派で、好き嫌いがない、というくらいだ。

そのため、双葉はなんとなく久世は洋食派だと思っていた。
あと、金持ちはだいたい洋食食ってるだろうという、知識の偏りだった。

完全なる偏見である。

まあ、そんな双葉なため、和食料理屋だと聞いて『へー、以外』と思うのだった。

そして、双葉は御品書きを見てギョッとする。

料理ではなく値段を見て、だ。

万には届かないものの、必ず千を超える数字を見て、目眩がした。

もしこれが久世の奢りでなければ、絶対ここには来ねぇだろうな、という思いを抱く。

そんな思いが顔に出ていたのか、久世が、

「ここより高いところに行ったら、お前が奢られにくいだろう？」

と言った。
双葉は確かにそうかもしれないと頷いた。

双葉を少しは気遣ってくれたらしい。

まあいいや、と半ば投げやりで美味しそうなものを選んだ。

そんなこんなで、冒頭に繋がる。

若干震える手で箸を持ち、頼んだ料理の一つを口に近づける。

あ、これ美味いやつだ。

それを口に入れる。

あ、これ美味いやつやん。

そして、嚥下する。

これ、すげぇ美味いやつだったな。

三回もの美味しさを感じてしまった双葉は、パクパクと食べ進めた。

ちらりと久世を見ると、楽しげに双葉を見ていた。

食べている様子を見られていたことに、恥ずかしく思いながら、気にしていない風にまた食べていく。

「………美味しいですか？」

双葉がずっとこちらを見ている久世に、痺れ切らしてそう訊くと、久世は少し沈黙して答えた。

「双葉の料理の方が美味いが、まあ、いけるぞ」

なんてところで世辞を言うんだと、双葉は顔を背けた。

嬉しいと喜ぶ自分の心が恨めしい。

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