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drown056 ページ10

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けどまぁそれもそうかと納得する。
剣城さんは御影さんに良いように使われている、と言えば言葉が悪いが彼のいい所をちゃんと見て彼の本領を発揮させている。

適材適所、きっと人をよく見ている証拠だろう。それで上手くやってここまで来ているのだから、この短い期間と言えどこの環境とあの成績で信頼を置いてもおかしくは無い。



「……あ」



引き続き凪さんの口へ切り分けたステーキを運んでいると、食堂の入口の方でこちらを覗いている人影が目に入った。フォークを口に含んだことを確認してゆっくりと抜き取る。また1口分を切りながら入口の方に目を凝らした。



「……あぁ」
「どうした向坂」
「いえ」



切ったステーキを凪さんの口に突っ込んで鉄板の上にナイフとフォークを並べる。持ってきた水を飲みきって立ち上がった。そのタイミングで久遠さんが「ちょっといいかな」と言って向かいの椅子に座った。



「私はこれで」
「ねーまだ残ってんだけど」
「ご自分でどうぞ」
「斬鉄」
「分かった」



その一言に剣城さんは私の腕を掴んで椅子へと座らせた。私これ絶対にいない方がいいのに。私の右斜め前、凪さんの正面に座る久遠さんは目が合うと顔を顰めた。

逃げようとした理由、それはここにいない方がいいと言うのはもちろんだが、単純に彼が今から話すであろう内容に心底興味が無い。なので。



「貴方がしたいことならご自由に、口も挟まないので。どうぞ私はいないものとして扱ってください」



思ったことをそのまま口にして、私はポケットからスマホとブルートゥースイヤホンを取り出した。

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作者名:shiori | 作成日時:2024年1月20日 19時

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