drown051 ページ5
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久遠さんが走っていった出入口を見ていれば、背後にあったモニターが光って振り返る。
『只今第五号棟第7試合、および第8試合が終了しました』
アンリさんのアナウンスが流れる。チームVとチームX、凪さんと馬狼さんのところだ。
正直そっちの方に頭が回るような時じゃなかった。今日中に試合映像を確認しておかなきゃと考えていれば、トン、と何かが肩に触れて反射で振り返ると、先程まで止めに入ってた國神さんと潔さんが立っていた。
「サンキュ向坂」
「助かったよありがとう」
「いえ。あ、皆さんお疲れ様でした」
「Aっち見てた？俺の活躍！」
どこからともなく現れた蜂楽さんは私の肩に手を置きながらそう聞いてきた。「素敵なボール捌きでした」と、そう言ってやれば、蜂楽さんは「まぁね！」と腰に手を当てて胸を張った。
腰を曲げてスリッパの足裏同士を合わせ、片手に持って立ち上がる。千切さんがこちらを向いていた。きゅ、と心臓が締め付けられる。彼がこちらへと1歩ずつ近づいてくる度にだんだんと鼓動が早くなった。
目の前で赤色が揺れて、動揺する。目の端で潔さんが2人の背中を押して離れていく様子が見えた。
「……」
ただ無言でじっとこちらを見つめる千切さん。目を合わせずらい私は視線をキョロキョロと動かした。ちらりと彼の方を見ると、それでも逸らすことなくこちらを見ていて、おもむろに口を開く。
「えっと、ち、ちぎりさん、その」
「……ふはっ」
花が咲いたような微笑み。
思わず力が抜けて手に持ったスリッパが足元に転がり落ちる。呆然のする私を見て、彼はおもむろに口を開いた。
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作者名：shiori | 作成日時：2024年1月20日 19時
