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drown080 ページ34

───



時刻は少し前に遡る。

潔、蜂楽、そして凪の3人を次のステージへと見送り、Aはひとつ息を吐いた。彼女はその場に立ちつくす玲王を一瞥して先程まで話していた人物へと踵を返す。



「修羅場か?」



こそ、と1人の青年が片側の三つ編みを揺らしてAの耳元に顔を寄せた。



「違うと思いますけど……。なんとも言えないですね」



そう返すと三つ編みの青年は「修羅場、修羅場」と繰り返した。口から覗くとんがったギザ歯は、彼女がここへ来てから馴染みのある雷市を彷彿とさせる。


凛たちトップ3が次へと進んだ後にやってきた、4位通過の黒名蘭世。歳はAの1つ下、彼女より数センチ高いものの体格のいい先程の3人や他の選手と比べれば小柄な方だ。

大して見上げる必要もなく、首が楽だということはそっと心に閉まっている。



「随分懐かれてるみたいだな、特に白くてデカいの」
「凪さんですね。多分刷り込みってやつだと思います」
「ヒヨコか?」



「始まってすぐくらいに寝てたところを起こして…」と話せば黒名は「そりゃ刷り込みだな」と腕を組んで頷いた。


ちら、ちら。

視線が泳いで、それを追う。



「気になるのか」
「えっ?あ」



声を潜めた黒名が不規則にどこかを盗み見るAにそう聞いた。自分でもそのことを理解しており、少し考えて口を開く。



「すみません、失礼します」
「ん」



一言断りを入れ、迷わず歩みを進める。

壁際に座り込んで顔を下に向ける玲王の隣で静かに息を吸い、息を吐きながら彼の隣に腰を下ろした。

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作者名:shiori | 作成日時:2024年1月20日 19時

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