drown079 ページ33
───
「─────なんてことがまぁ、ありまして」
長座前屈する凪さんの背中を置いている手に少し体重をかけながらそう話すと「女子にもそんな感じなんだねー」と右足のアキレス腱を伸ばす蜂楽さんがそう言った。下で凪さんが「いたい、A、ぎぶ」と呻き声を上げている。
「ねえもう十分したよ」
「まだ始めたばかりですよ。怪我の予防、パフォーマンス向上、筋肉への負荷の軽減など。いいことだらけですから」
「んぇ〜、めんどくさ」
「ほらそう言わずに」
そう言ってまた少し体重をかけた。
あの後、蟻生さんが入ってきて事なきを得たが、糸師さんの私への好感度、というか評価はきっとマイナス。いや、それどころか彼の意識の範囲にすら入っていないんじゃないだろうか。
糸師さん、蟻生さん、そして蟻生さんの後に入ってきた時光さんの3人は揃うなりすぐ3rdステージへと進んだ。人が集まり、次にできた3人組が凪さん、蜂楽さん、そして潔さんらの3人。3rdステージでは、現場にはいなかったが蜂楽さんが言うに潔さんが試合の申し出をしたらしい。
今はその試合に備えたトレーニングの手伝い中である。
「向坂さん、怖いもの知らずって感じだったからちょっと意外かも」
「それ潔が言う？」
「それ潔さんがいいます？」
潔さんがそう言って、重なった声に思わず蜂楽さんと顔を見合せた。
「怖いというかなんというか。今までに居ないタイプでどう接したらいいのか、みたいな」
「ねぇA」
割り込むように凪さんから名前を呼ばれ、背中を押していた手を止める。
「レオとなんか話した？」
「……まぁ、話したとも言えますし、話してないとも言えます」
「どっち」
「あーあー、はいはいはい」
「え、ちょ、あ、いてててて」
背中から肩へと手を移動させ、ぐぐぐ、と思い切り体重をかけた。何事にもめんどくさい、めんどくさいと言う凪さんだが、その辺凪さんもかなり面倒だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 217人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：shiori | 作成日時：2024年1月20日 19時
