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2ndステージの部屋に来て、体感30分ほど。そのうちには1stステージの説明の時間も含められている。
入口から見て右手側の壁に背を預けて座り、立てた膝に乗せたタブレット越しに眺めた。アンリさんが言っていたドイツのトップクラブの設備を改良して作ったシステム。ホログラムのゴールキーパーにはAIが搭載されているらしく、世界トップクラスのキーパーのデータが集結されているらしい。
「お金かかってんなぁ…」
「予算がない……!!」と嘆いていた頭を抱えるアンリさんの姿が脳裏を横切る。
それぞれの選手の様子を眺めながら、ここに絵心さんがいたらと考えた。
「4方向からのランダムなボールと時間制限のあるエリアの指定……。ペナの、というかゴール前の状況の再現?キーパーとの距離感、どこからボールが来るのかという空間の把握、落ちる場所への走り込み─────」
画面を一定のタイミングで切り替える。
ほぼ癖のようなものになっていた。
ここに意味の無いものなんて存在しない。全てがサッカーに関係する。そう言われ、聞かれずとも考えるようになった。何が必要で、どんな風に影響するのか、何が求められるのか。
「─────おい」
「はいっ」
刹那、自分自身に声を掛けられたような気がして反射で返事をした。タブレットの電源を落として肩にかけたトートバッグに仕舞い、立ち上がる。
少し先、目の前に見慣れたボディースーツ。
目線をあげるとターコイズが目を引いた。
「……あぁ。申し訳ありません糸師さん、もうクリアされたんですね」
「あ?」
美人の凄んだ顔はやはり怖い。その一言に何が込められているのかは汲み取れなかったが、私は「初めまして」と口を開いた。
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作者名:shiori | 作成日時:2024年1月20日 19時