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ピシャリと言い切る絵心に帝襟はくすくすと笑った。
いやー、分かるよAちゃん全然めっちゃ可愛いよ、心配になるよ。絵心さんは間違ってない。
帝襟は絵心の心を見透かしたかのようにそんなことを思いながらひとり頷く。
「何」
「いーえ、なんでもありませーん」
定例のミーティングを終え、モニターを見上げる帝襟はあちゃーと困ったように笑った。それを見て絵心も見上げる。
眉をひそめた絵心を見て口を開いた。
「絵心さん、防犯グッズいくつか取寄せときましょうか」
「……そうだね」
帝襟が「スタンガンと防犯ブザー、催涙スプレーなんかが王道になるんですかね?」と言いながらネット通販を眺める隣で絵心はモニターを見てため息をついた。
様子が変わった若干名のうちの一部。
ふたりがミーティングをしているうちに食事を終えたようで、共に座っていた蜂楽、潔と別れたかと思えば潔はAを呼び止めていた。
「……言ったそばから何してんのあの子は」
思わずそんなに言葉が零れていた。
こちらから操作しない限り向こうに声は聞こえないし、同じように向こうの声も聞こえない。そのため何を話しているかまでは分からないが、潔の表情を見るにまた何か言ったんだろうなとは察する。
「そうだ、Aちゃんのことで少し」
ふと思い出したように口を開いた帝襟。
ちらりと横を見上げ、絵心はこめかみに当てていた指先を離した。
「実は上から頼まれたことがありまして───」
帝襟の"上から"という言葉にぴくりと反応した。
何かよからぬことでも企んでいまいな。きぃ、と軋ませながら床を軽く蹴って椅子を回す。
2人が話す背後のモニターの一部に、Aに触れる潔が映された。
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作者名:shiori | 作成日時:2024年1月20日 19時