drown067 ページ21
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「俺が言うこと復唱して」
「えっ?はい」
「選手と二人きりににならない」
「せ、選手と二人きりにならない」
「近づきすぎない」
「近づきすぎない」
「何かあったらすぐ叫ぶ」
「何かあったらすぐ叫ぶ……なんですかこれ」
「それさえ頭に入れておけばいいから」
「ほら仕事に戻って」と前を向いて手を払った。
顔を顰めながらも失礼します、とこちらを向かない絵心さんに頭を下げて部屋を後にする。
えーと、することといえば。
明日に備えてのトレーニング器具の点検とタオルと、バケツと袋も必要かなぁ。備品倉庫に置いてあったような気がする。
明日の流れをイメージしながら、ひとつずつ必要なものを指折り数えていく。
「……さすがにまだ早いよなぁ」
ポケットからスマホを出して時間を確認する。今の時間帯、トレーニングをする人がいる訳だから使っているところを確認してもと過ぎった。
しかし確認して損はなし、様子を見るために1度食堂へと向かった時だった。
「あー!Aっち発見!!」
「え?わっ」
手を広げながらこちらに向かってきた蜂楽さんの腕の下をくぐってかわせば「うそー!!?」と叫びながら通り過ぎて、少し先で止まった。
「お疲れ様です蜂楽さん」
「おつかれー。ちぇ、今日も失敗かー」
「蜂楽さぁ……。ごめんな、向坂さん」
「いえ、流石にあの勢いは身の危険を感じで」
あとからやってきた潔さんにそう言われて肩を竦める。
「お前見かけるなり飛びつこうとするの何?俺でも驚くんだから向坂さんなんて尚更だろ」
「……んーっと、俺なりのコミュニケーション?」
「距離感って難しいですよね。さすがに突進は怖いので今度からハイタッチにしときましょう」
いぇい、と言って両手を上げると、彼はぱっと笑って手を合わせた。
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作者名:shiori | 作成日時:2024年1月20日 19時