青に溺れる 2【ブルーロック】 (ページ17)

今日:125 hit、昨日:171 hit、合計:15,822 hit

drown063 ページ17

───

「じゃあこれAちゃんのとこの私物ね」
「はい。あ、鞄とかって」
「もうバスに積んであるよ。選手達が出る時にこれだけ渡してもらえば大丈夫だから」
「了解です」

そう言ってテーブルに積まれた白いケースを見た。それぞれ1つずつ、スマホと財布が入っている。これらは全てここに収監される前に選手たちから預かった私物で、そして計30個のケースは今回の一次選考で脱落が決まった選手たちのものだ。

じゃあよろしく、と言ったアンリさんを見送って、すっかり手に馴染んだ台車にそれらを乗せて出口へと運んだ。青白い光が足元を照らす暗い廊下にゴロゴロと虚しく響く。

扉の前に設置された長机に、ケースに書かれた名前を確認しながらチームごとに分けて並べて選手たちが到着するのを待った。

しばらくして、廊下の奥から微かにすすり泣く声が聞こえた。暗くて奥が見えない廊下に響くその声は、まるで幽霊の声のようで。

「高良さんですね、どうぞ」

こんな時も律儀に並んでいることに日本人の質を感じる。偉いよなぁ、なんて思いながら顔を確認してスマホと財布の入ったケースを差し出した。

「はい、江崎さんですね」

「大川さん、のは、はい」

「神楽さんがこちらで、不破さんがこちらです」

最後のひとつを渡し終え、その人の後を追うように外に出た。冬の夜の冷えた風が露出した肌に張り付く。
バスにエンジンがかかる。動き出して小さくなるバスを見て、渡す際にあえて言葉にしなかったお疲れ様でした、の意を込めてお辞儀をした。