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drown058 ページ12

───


ぎゅ、とその言葉に心臓が縮こまる。「Aもいこー」と呼ぶ凪さんの声に生返事をして剣城さんのすぐ後ろに追いついた。

私に言ってるわけじゃないことくらい分かっているのに、彼の口から発せられたその言葉に古傷がじくじくと痛んだ。治りかけの生傷をもう一度傷つけられて、塩を刷り込まれているかのような、そんな感覚。

結局天才は、どいつもこいつも出来ない奴を馬鹿にして。



「…おい、待てよ」



その声の方に顔を向けたのは私と御影さん。



「潔さん……」
「なんだお前?」
「サッカー、なめんな!」



びし、と彼らを指さしてそう言いきった潔さん。その奥からこちらへと向かってくるチームZのメンバーが、好戦的な、闘志を燃やした目をして彼らチームV3人を睨んでいる。



「チームZ潔世一、お前らに勝つ人間だ!!」


◇◇◇



───頑張んなきゃ勝てないなんて、弱い奴はめんどくさいね



あの時の凪さんの言葉が何故か頭にこびりついて離れない。
電気を消した薄暗い部屋のベッドの中でうずくまる。



「頑張って勝てるなら、良かったんだけどなあ」



もぞ、と身をよじらせ、横を向いて体を丸めた。被った布団を自分の方へと引き寄せる。

久々だなこの感じ。忘れていたはずのことがゆっくりと体を蝕んでいく、この嫌な感じ。大丈夫、あの時があったから今があるんだから。Aは今が幸せならそれでいいんだよ。

子どもをあやすように、何度も何度も言い聞かせる。



「何も間違ってない、大丈夫」



ふとした時に蘇る記憶にそっと蓋をして、ゆっくりと目を閉じた。

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作者名:shiori | 作成日時:2024年1月20日 19時

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