drown057 ページ11
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イヤホンを両耳に付けると情報を遮断するように目を閉じた。性能のいい遮音性のイヤホンだが、音楽をかけていなければ耳を澄ましてみれば声くらいは聞き取れる。向かいに座る久遠さんの話が隙間を縫って鼓膜に届き、やっぱりかと私は呆れてしまった。
狸の寝入りをするように俯いて目を瞑っていると、膝の上に重ねた手を握られて目を開ける。右側から伸びる白い手は他の誰でもなく、凪さんの手だ。何用だと思い隣を向くと、目が合った彼は口を開けた。
ため息をついてナイフとフォークを握る。同じように1口サイズに切り分けて「あーん」と言いながら差し出すと全く動く気配がない。そこまで持っていけってか。舌の上に載せるとぱく、と咥えてフォークを抜いた。
もそもそと食べる姿はナマケモノみたいだ。
「───な！？どうだ！？俺と組まないか！？」
僅かに聞こえたその声に説明が終わったことを察してイヤホンを外した。
「つまんねぇ」
「断る」
「めんどくさ〜い」
3人の反応に久遠さんは呆然とする。そりゃそうだろうなと思いつつ、咀嚼がめんどくさいと言い出して御影さんの背中に乗る凪さんにこの短い時間の何度目かの呆れ。
「このステーキもったいなくない？」と言う剣城さんに「食べちゃってください」とフォークを差し出し、皿をまとめた。
(……というか、あれチームZだよな)
皿を戻して彼らの元に戻りながら、食堂の入口の方をそっと見上げる。
4人は彼らが見ていることには気付いていないようで、今この場を後にしようとした3人を久遠さんが引き止めた。必死になる彼に凪さんは目をやると「ねぇ玲王」とおもむろに口を開いた。
「なんでこの人こんな必死なの？」
「勝つためだろ？」
「ふーん…」
凪さんは御影さんの言葉に適当に相槌を打って、続けた。
「頑張んなきゃ勝てないなんて、弱い奴はめんどくさいね」
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作者名：shiori | 作成日時：2024年1月20日 19時
