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チームW対チームZの試合当日。
ひとつ息を吸って、チームZのロッカールームをノックした。
「お疲れ様です、試合開始10分前になりました」
いつもの如く、音頭をとるのは久遠さん。既に準備を終えていた面々はそれぞれ気合を入れて立ち上がる。ロッカールームの扉の廊下側に立ってストライカーたちを見送った。
目の前を赤が横切る。それを無意識に視線が追うが、赤色がこちらを振り返ることはなかった。小さくなっていく。
チームW戦。相手は鰐間兄弟が中心の、双子ならではの息のあったプレーが魅力的なチームだ。そんな鰐間兄弟は、千切さんの通う鹿児島の羅古捨実業高校の先輩にあたる。
つまり、千切さんが走れないことをふたりは知っている。
「…落ち着かない」
なんだか、嫌な予感がする。
千切さんのことか、それともまた別のことか。
そわそわとしながら押してきた台車に乗せたタオルとドリンクを置いてそそくさとロッカールームを後にする。ハーフタイム後の準備をして、直ぐに絵心さんとアンリさんのいる所へと向かった。
「お疲れ様ですっ」
「あ、お疲れAちゃん」
時間ギリギリ。部屋に入ったタイミングで試合開始のホイッスルが鳴る。
兄鰐間淳壱のボールで試合が始まった。
アイコンタクトで相手の意志をくみ取って抜群のタイミングでパスを出す。素早いワンツーでボールを上げディフェンスラインを突破していく。やはりその場しのぎではふたりを止めることは難しいようだ。
「Aちゃん、君は結局どうすることにしたの」
「え？」
「電話してたでしょ昨日」
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作者名：shiori | 作成日時：2024年1月20日 19時
