･ ページ12
me side
os「…もうこんな時間めうね」
『…そう、ですね。とても楽しい時間でした』
昼らしい明るさはとうに消え、茜差す夕暮れの陽が顔を出す。残念そうに片付け始める外交官様を手伝い、カチャカチャとカップとソーサーを丁寧にしまった。
os「…ん、ありがとうめう」
『いえ…こちらこそ、素敵な時間を過ごさせて頂き光栄でした』
深く腰を曲げ、最敬礼を示して顔を上げる。
…と、ガサッと紙袋の音ともに目の前に出されたのは、街で有名な茶葉の御店のロゴだった。
『…これ、は』
os「さっき、Aちゃんが気になってた俺の秘密。特別に教えてあげるめう！」
開けて開けて！と無邪気に渡された袋の中身は、丸カンに入った紅茶が2つ。1つは今日頂いたアールグレイ、もう1つは見覚えのある華やかな黄色や橙の花びらに、オレンジがかった水面のカップがプリントされた、可愛らしい見た目の缶だった。
アールグレイの缶とは少し違う、丸みを帯びたフォントで書かれた商品名。
『──マリーゴールド、ティー』
os「そ。……これね、"若返りの薬"って呼ばれてるんよ」
『若返り、ですか』
os「デトックス効果もあって飲みやすいから、俺これ好きなんよね。…それに、」
──Aちゃん、マリーゴールド、好きでしょ？
『………何処、で…
os「んふふ。まぁ美味しいことに変わりはないから、飲んでほしいめう！」
にこっと人受けのいい笑みを浮かべて、テラスを出た外交官様。無造作に置かれた紙袋と手の中の缶を見比べて、そうして自分の指先が、微かに震えていることに気付く。
『…大丈夫。
──バレる、はずがない。
深呼吸をひとつして、紙袋に缶を戻してテラスを出る。チラッと覗いたバルコニーから見た景色では、水平線の端の方で、夜の帳が下ろされようとしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1384人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽてち(プロフ) - もう1人の私と私の会話で苦しくなりました。壊れてゆくのを現するのがお上手すぎて頭が上がりません！花言葉を知っていた私は見た瞬間奇声を上げながら号泣。人には得意不得意あって尊重するべきと学べる素晴らしい物語でした。有意義な時間をありがとうございました！ (2023年4月11日 8時) (
レス) id: b72c422986 (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - コメント❌小説⭕️ごめんなさい誤字ってしまいました (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - そして作者さん、とても感動して素晴らしい作品を描いてくださり有難うございます。素敵なコメントを書いてくれたあなたに幸あれ (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - ネコさん» 嫌いなら嫌いで自衛するべきです。わざわざここのコメ欄に書く必要はあるのでしょうか。下の方々のようにとても楽しんでいる方達もいます。そのようなアンチコメントは心の中でとどめておいてください。とても不愉快です。 (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 人に酷いことしたのに幸せになる物語嫌い (2022年8月21日 17時) (レス) @page42 id: 0cd09c89d9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Toki | 作成日時：2021年3月4日 7時
