賽は投げられた ページ20
me side
al「時が来たわ」
恍惚とした笑みを浮かべ、無垢な少女のように瞳を輝かせる女。年に合わない雰囲気の中、その目に宿るのは愉悦か、はたまた京楽か。
『行きましょう、主』
al「えぇ、そうね.....あの愚かな若造に見せつけてやりましょう。私たちの力を」
* * *
『.....起きてるか』
「起きとるよー」
「ん、おはようA」
『体調に不良は』
「特になし」
「俺も無いかな」
『なら良かった。今日仕掛ける。隙を見て逃げてくれ』
「Aは?」
『...まだ、側を離れられない。外道丸はバレぬよう厩舎に繋いである。武器もそこに隠した』
「流石やなぁ、助かるわ」
「良かった、外道丸も無事なんだね」
『あぁ。.......そろそろ、時間だ』
「無理すんなよ、グルッペンだって待ってるんやから」
「勿論、俺たちもね」
『.....ありがとう』
立ち上がり、2人の"仲間"を見る。
迷いのない、力強い双眸と視線を交わった刹那、城郭で銅鑼を叩く音が聞こえた。
「...始まったな」
『.....もし、』
「ん?」
『...もし、赦してくれるなら』
「おう」
『......."ただいま"と、お前たちに言いたい』
それだけを言い残し、地下牢を出る。
城を駆け上がっては優雅に佇む女の隣に経ち、目下でぶつかった兵と兵を眺めた。
al「始まったわね、愚かな戦いが」
『...』
al「A?どうかしたの?」
『...いえ』
意気揚々と微笑む女が、甘ったるく名前を呼ぶのが気に食わない。それでも耐えて得た信頼を今、私はぶち壊そうとしている。脆くて弱い、名ばかりの絆を。
『...儚いものですね、絆というのは』
al「え?どうしたの急に.............っ、」
安心しきったその背中に、とんっと手を置くように。
驚愕に目を見開く女を眺めながら、背中に突き刺したナイフをぐっと押し込んだ。
『...己が主は、ただ1人』
al「っ、...!」
『彼の下でのみ、私は輝く。我が牙は、主を守る為にある』
吐き捨てるように呟き、膝から崩れ落ちた女を見下ろす。口許を震わせながら言葉を紡ぐ姿は、見ていてとても滑稽だった。
al「...不愉快、だわ.....憎しみを、捨てて...ッ愛を選ぶ、なん、て」
『所詮私は、人の子だからな』
al「.....そう.....可哀、想な...女の子ね、貴女も、わたしも.........」
『.....そう、かもな』
力の抜けた身体に近付き、そっと瞼に手を這わす。閉じられた瞳の奥にある哀しみは、きっと消えることは無いのだろう。
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(。・ω・。) - 子れは神ですか?神ですね(自己解決)ありがとうごさいますm(_ _)m (2021年12月29日 10時) (レス) @page38 id: 564be5b250 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - うおうおうおうおうおうおう……ッッッ(混乱)なんだこれなんだこれ…!ずっと更新待ち望んで見るぞーって思ったらめっちゃ一気に話出てるし尊いしgr氏の獣みすきだし、夢主おめでとうだし……ッッ!!ここが天国ですね(昇天) (2021年1月4日 1時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
Toki(プロフ) - おぼろどうふさん» ありがとうございますっっ! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - おかえりなさぁぁい!!待ってました! (2020年11月21日 19時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - Tokiさん» 困惑と思惑4、の最後の言葉、すごい鳥肌が立ちました。いい意味です!もう、最高ですか… (2020年9月30日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Toki | 作成日時:2020年7月24日 21時