記憶とともに ページ9
？ side
ずっと会いたい奴がいた。
ずっと守りたかった奴がいた。
ずっと離したくなかった奴がいた。
そいつはとにかく自由で気分屋で、いきなり本を読み始めたと思ったら外に駆け出し、帰ってきたと思ったら急に寝る。家柄は良いのに縛られたくないからと、両親に怒られてもどこ吹く風で。長男として家を継ぐことを強制されていた俺とは違い、あいつは何処までも自由だった。まるで猫みたいだな。そう呟けば、
『猫より烏がいい』
なんて無邪気に答える。
なんで烏なんだ？そう尋ねれば
『だって-----は鷹だから』
と真面目な顔で言う。
家紋の話をしているのなら、確かに俺の家の象徴は"鷹"。なら何故あいつは"烏"なのか。家紋で言えば、全く違うのに。
『鷹は強いんだよ。何処までも飛べる強い翼と鋭い眼。------みたいにあおくないけど、-----みたいに格好いいから』
そう言ってはにかむ笑顔が可愛らしくて。手を差し出せば握ってくれる、今よりも随分小さな──それでもあいつよりも大きかった手。間延びした声で名を呼ばれれば、同じように名を呼んで。先生に叱られるのを覚悟で飛び出した街は、全ての建造物が大きく見えた。一際目を引く石造りの塊は、いつかは自分が仕える場所。分かっていても、実感は無かった。
｢…大きいな｣
『うん。大きいね』
｢俺は将来、あの城で働く。父上と同じように｣
『そうなんだ。でも、想像出来ないや』
｢何がだ？｣
こっちを向いて、クスリと笑ったあいつ。
握る力を強くして、固く離れないように繋がれた、手。
『-----は、自分でお城を造りそうだなって』
今思えば、あいつの読みは正しかった。
｢俺が？自分の城を？｣
『うん。何だか、そんな気がする』
寂しそうに前を向くあいつが、どんな気持ちで言ったのかは分からない。その後すぐに戦争が起こって、あいつとは離れ離れになってしまった。もしあの時握った小さな手を、もし、掴めていたのなら。
｢…やはり、俺はお前がいないとダメみたいだゾ｣
｢なんやグルさん、独り言か？｣
｢おうトン氏。書類はちゃんと終わらせたゾ？｣
｢んなこと分かっとるわ。あ、ゾムがグルッペンに話があるって｣
｢話？潜入捜査の事か？｣
｢知らんけど。ゾムもうそろそろ帰ってくるから、ちゃんと総統室にいてな｣
｢わかった｣
遠くでピィー…と鳥が鳴いている。
あれは鷹だと、無意識に独りごちて呟いた。
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眠る猫 - 私は本当の事を言っただけですよ！！本当に面白くて、更新されてたら真っ先に見に行きますもん！ (2020年6月4日 16時) (
レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
ととちゃ。(プロフ) - いやいやいや褒めすぎっすよ！思わず顔がにやけましたわありがとうございますっ (2020年6月3日 19時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
眠る猫 - ととちゃ。さん» ちゃんとオリジナルフラグ、外れた様ですね！よかったです！！…にしてもこの作品、面白すぎるでしょ！？天才ですか！？もう、好きです！（は？） (2020年6月3日 18時) (レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
ととちゃ。(プロフ) - 眠る猫さん、アドバイスありがとうございます！そう言って頂けるとものすごく嬉しいです！無理せず自分のペースで頑張りたいと思います！ (2020年6月2日 16時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
眠る猫 - あと、この作品をとても楽しみにしながら待っていますので、無理しない程度に更新を頑張って下さいね！ (2020年6月1日 21時) (レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Toki | 作成日時：2020年5月23日 16時
