序章 ページ2
──カランコロンと、心地良い音がする。
『はい！いらっしゃいませ〜』
誰もが絆される笑顔を貼り付け、今日も僕は元気に働く。肩までに切り揃えられた真っ黒な髪を軽く結い、席に着いたお客に注文を取りに行く。『ご注文は？』と微笑み伺えば、此方を見た男はさっと顔を染め気持ちの悪い視線を向けてくる。男の後ろに立った2人の護衛は何も言わない。無干渉。正しくその通りのようだ。
｢おすすめの珈琲をひとつ｣
『承りました。少々お待ち下さい』
注文を受けカウンターへと向かい、マスターに伝える。手際よく珈琲を淹れ始めた音を聞きながら、今さっき入店した男を見つめた。
一般市民には思えない高級なスーツと革靴。裕福な人間らしく丸々とした体型と謎に丁寧な作法。女に頬を染める様子は気色悪いが、間違いなくこの国のお偉いさんだろう。すぐさま淹れたての珈琲を持っていき、いつもの笑顔で接客する。
『お待たせ致しました。ご注文の珈琲でございます』
ごゆっくりどうぞ、と珈琲を置いてカウンターへと戻り近づいてきたマスターに向かって口をひらく。
『あの様子はアタリ。多分大臣だろ』
｢大臣？にしては警戒心がないようだが｣
『無駄に作法が良いし護衛付き。何よりもこれ』
バレないようにスって手に隠し持っていた数枚の紙を見せれば、感嘆したようにマスターが呟く。
｢あんた…いつの間に｣
『いや珈琲渡すついでに』
やっぱ人間業じゃないな、とニッコリ笑うマスターを他所に店内を見回し、1人の客に目を止める。
『…マスター、あのお客』
｢ん？…あぁ彼ね。注文もせず朝からずっといるよ｣
『…へぇ』
人連れの客が多い中、男は1人で来店していた。
深緑のパーカーを目元まで深く被り、チラチラと隙間から茶髪が覗く。服の上からでも分かる鍛えられた身体と静かな殺気。あの大臣が入ってきた時にチラリと目線を寄越した所を見ると、もしかしたら目的は同じなのかもしれない。勘ではあるが、目星を付ける価値はありそうだ。
『マスター、あの客が帰ったらあがっても？』
｢ああ、構わないよ｣
『どうも』
そう言って数十分経てば、先程珈琲を注文した割腹のいい男は席をたち会計をして店を出た。頃合を見計らってカウンターから出、素早く服を着替え裏口から出る。スタッフルームに行く際に見えたのは、深緑のパーカー男が同じようにドアを開ける瞬間だった。
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眠る猫 - 私は本当の事を言っただけですよ！！本当に面白くて、更新されてたら真っ先に見に行きますもん！ (2020年6月4日 16時) (
レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
ととちゃ。(プロフ) - いやいやいや褒めすぎっすよ！思わず顔がにやけましたわありがとうございますっ (2020年6月3日 19時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
眠る猫 - ととちゃ。さん» ちゃんとオリジナルフラグ、外れた様ですね！よかったです！！…にしてもこの作品、面白すぎるでしょ！？天才ですか！？もう、好きです！（は？） (2020年6月3日 18時) (レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
ととちゃ。(プロフ) - 眠る猫さん、アドバイスありがとうございます！そう言って頂けるとものすごく嬉しいです！無理せず自分のペースで頑張りたいと思います！ (2020年6月2日 16時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
眠る猫 - あと、この作品をとても楽しみにしながら待っていますので、無理しない程度に更新を頑張って下さいね！ (2020年6月1日 21時) (レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Toki | 作成日時：2020年5月23日 16時
