【短編集】氷上の王子と私 3【羽生結弦】 (ページ34)

今日:10 hit、昨日:5 hit、合計:174,066 hit

．ページ34

．

Side. Yuzuru

.

『ノブ君?』

信｢突然かけてごめんなぁ、今度の収録のことで連絡があってん｣

『あぁ、そう』

信『どないしたん、元気ないな。喧嘩でもしたんか?』

『まぁ、そんなとこ』

信『青春しとるんやなぁ、僕に言うてみ』

決して青春ではないんだけど…
でもノブ君はスケートも恋愛も先輩だ
相談して損は無い

僕は今まで起こった経緯を話した
するとノブ君はさらっと言った

信『うん、ゆづが悪い、謝ろ』

『え!? 』

信『こうしてくれて当たり前なんて思ったらあかん。常に感謝せな、いつもゆづが大事にしとることやろ?』

そうか、感謝か
僕はAに甘えきって感謝することすら薄れていたのか

信『謝る勇気も強さやで、Aちゃんなら絶対許してくれるわ』

『わかった、ありがとう』

短く電話を切るとその後すぐにメッセージが届く
大事なこと忘れてたわ!! と冒頭のメッセージだけが見えて収録のことかなと思ったけど後で見ればいい

Aの部屋の扉をノックしてみるが返事はない

『A?』

｢…｣

『…入るよ?』

ゆっくり扉を開くと綺麗に整った部屋の景色が広がる
その隅っこで毛布にくるまった彼女がいた

｢…何｣

『A…』

僕に鋭い視線を向けるAの目は潤んで赤く腫れている
そばに寄って隣に座ると隠れるように顔を下に向ける
言葉が詰まって出てこない
でも僕はできるだけ優しく言った

『…ごめんね』

｢…｣

『いつも文句一つ言わずにそばにいてくれてありがとう』

｢…めん｣

『え?』

｢…私も、ごめん…｣

『なんで』

｢結弦が忙しいの分かってたのに｣

『うん、でも今回は僕が悪いから。絶対時間作るから、許してくれる?』

小さく頷くAの頭を撫でてやると抱き着かれて少しだけ離れていた温もりが戻ってくる

『目真っ赤』

｢うるさい｣

『よしよし』

感謝の気持ちを忘れずに

当たり前の優しさは当たり前じゃないことを知る