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Side. Yuzuru
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「…る…、づる」
『…ん』
誰かが僕を呼んでいる
夢だろうか
「結弦」
はっきりと僕を呼ぶ声がしてはっと顔を上げるといつの間にか目覚めて僕に微笑むAがいた
どうやら一緒に眠ってしまっていたらしい
なんて声をかけたらいいか迷ってしまって、とりあえずおはようとだけ言うとおはようと微笑み返される
「…心配、かけちゃったね」
『でも、スケートには起きることだから』
「…アイスショー、出れなくなっちゃったらどうしよう」
『A…』
いつもならイベント前に怪我をしても絶対治して出る、くらいの勢いなのに
今日は違った
Aはとても弱って見えて、小さく見えた
「…私、スケートに嫌われちゃってるのかな」
あはは、と弱々しく笑うAを抱きしめずにはいられなくて
『Aは、スケートに愛されてる』
そう口走った
Aは、え? と声を漏らす
『Aはスケートやみんなに愛されてるよ、だから現役を引退してもアイスショーに呼ばれるし、乗り越えなきゃいけない壁があるんだよ』
淡々とAの耳元で話すと、そっか、と少し安心したような声がした
「ありがとう結弦、そばにいてくれて」
『僕がつらい時Aがずっと支えてくれたから』
「そうだっけ?」
と、とぼけるAはもういつものAだ
儚く消えてしまいそうなAはいない
『支えあって生きてくって、決めたから』
「…ふふ、そうだね」
君には落ち込んだ姿より前向きに笑う姿の方がお似合いだよ
そう思ったけど言葉にはしなかった
「よーし、リハビリ頑張らなきゃ」
『無理だけはやめてね』
「結弦に言われたくありませーん」
けたけたと笑うAは楽しそうで
僕の手をずっと握りしめていた
…何か忘れている気がする
『…あ』
「え、なに、なに思い出したの」
『Aが起きたらナースコールしてって言われてたんだった(笑)』
「ちょっと、大遅刻(笑)」
僕がナースコールを押したのはAが起きてから2時間後だった
これからもこうやって
楽しい時も辛い時も、共有して支えあって
笑っていきたい
僕のそばでずっと笑っていてほしい
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作者名:星羽 | 作成日時:2018年3月7日 16時