【短編集】氷上の王子と私【羽生結弦】 (ページ34)

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『…僕、ずっとAに僕の滑りを見ててほしい』

突然結弦が発したその言葉
目を開けようとした矢先のことで思わず寝た振りをする
完全に起きるタイミングを見失いました
どうもこんにちは、空野Aです…

私が起きているとは知らずにぽつりぽつりと話し出す結弦

『1人は寂しいし怖いけど、Aがいたらなんだってできる気がするんだ』

いつもは聞けない結弦の本音
その一つ一つには愛があり、偽りは何一つない
凛とした声が私の鼓膜を揺らして心地いい

『Aには心配ばかりかけてるけど…いつかAをもっとしっかり支えられるようにさ、僕も大人になるよ』

結弦はスケート一筋だと思ってた
でも今は、結弦のスケートだらけの頭の中に少なからず私がいる
優越感と、愛おしさが押し寄せる
我慢出来ずに結弦に答えた

｢…今に一生懸命になって、結弦｣

『！起きてたの？』

｢夢の中で王子様が呼んでただけ｣

なにそれ、と頬を膨らまして不機嫌になる結弦さん
夢の中の王子は貴方だよ、貴方

｢私、結弦を好きになったこと、後悔したことなんて一度もない。これからもずっと一緒にいるつもり｣

ぱぁぁっと効果音がつきそうなほどの笑顔で私を抱きしめてくれる
可愛い

『Aの寝顔を見て、見えなかったものが見えたんだ。何を大切にすべきか、いつもは見えないAのこととか』

｢え、何が見えた？寝顔へんだった！？｣

『気になる所はそこなんだ(笑)』

ケラケラと笑う世界王者
コロコロと変わっていくその表情が好き

『僕、絶対Aを幸せにする。もちろんスケートも一緒にね』

いつもは気付かない結弦の心の奥底の本音
心からスケートを愛し、私をも愛してくれる絶対王者

そんな羽生結弦に
私は今日も恋をする