【短編集】氷上の王子と私【羽生結弦】 (ページ18)

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．ページ18

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Side. Yuzuru

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思ったより遅くなってしまった
本当ならもう少し早く帰ってAと2人で寝れる予定だったけどなかなかジャンプのコンディションが良くならず時間がかかってしまった

もう深夜0時を回る
先に寝ていいよ、と送ったメッセージは既読がつくことはなく、僕はてっきりもう既に寝てしまったものだと思っていた

『今日もそっとベッドに潜り込んでやろ(笑)』

そんな呑気なことを考えていた

あくまで深夜、インターホンは鳴らさない
そっと鍵を開けて家に入る

リビングの電気は消えていた
やっぱり寝てるか

そう思ったのも束の間だった

どこかの部屋で小さく泣く声が聞こえた
それは間違いなく寝室からで、間違いなくAの声だ
僕は着替えるのも忘れて急いで寝室に向かった

そっと扉を開けると眠っているAの姿はなく、ベッドに腰掛けて泣いているAがいた

なぜ泣いているのだろう、何が彼女を泣かせたのだろう
いろんな疑問が渦巻くが、それはAが落ち着いてからでいい
今はとにかくそばにいたかった

そっと近付くとAは顔を上げた
目を真っ赤にして今にも消えてしまいそうな声で｢結弦、｣と言った

『よしよし、大丈夫』

ただ抱きしめた、理由は聞かない
僕の腕の中で泣くAはとても儚くて弱々しかった

Aが落ち着くまでただ黙って抱きしめて頭を撫でていた
だんだん涙をこらえる声も無くなり落ち着いたようだ
僕はできるだけ優しく彼女に問うた

『なにがあったのか僕に聞かせて？』

｢…私は…結弦には似合わないって…｣

ぽつり、ぽつりとAが話し始める
どうやら自分の名前で検索をかけて傷ついてしまったようだった

僕も見ていい？と聞くと小さく頷いたので肩を抱き寄せたまま僕は空野Aと打ち込んだ

僕は心無い言葉を書くファンに腹が立つと同時に泣かせてしまった自分にも腹が立った

『守ってあげられなくてごめんね、』

そう言うしかなかった
でもAは違う！とすぐに否定した