【短編集】氷上の王子と私【羽生結弦】 (ページ14)

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＜空野Aの最後の舞が始まります＞

画面には大きな歓声を浴びて手を振りながらリンクをゆっくり滑る私がいる
結弦はそれを私の上から食い入るように見ている
もうこれ見るの何十回目なの…飽きるでしょ

私が最後に踊った曲はサン･サーンスの[白鳥]
結弦が前にエキシビションで滑った曲
私が滑った曲を結弦も滑りたいと言い、結弦が追う形で同じ曲を滑った

『この時の衣装、本当好き』

私のこの時の衣装は白を基調に青やエメラルドグリーンを使った衣装
白鳥をイメージして普段よりヒラヒラさせて、ラインストーンを付けてもらったりと結構こだわったっけ

中心に行くまでのちょっとした風にも衣装がはためき輝く
綺麗だね、と結弦は呟いたけど恥ずかしくて聞こえないふりをした

『…何度見てもすごい、見とれる』

｢何言ってるのよ全く…｣

『引退して欲しくなかったなぁ』

｢2人してまだ現役やってたら一緒に過ごす暇もないよ(笑)｣

『まあそうだけど…またAの滑り生で見たい』

｢私は結弦の滑りで充分｣

＜乙女の舞を魅せた女神、空野Aが最高の演技を見せつけました!!＞

テレビからの実況、会場のスタンディングオベーションは今でも忘れない
あの時は流石に泣いた

｢そう言えば滑り終わったあとずっと結弦のとこで泣いてたよね｣

『そうそう、あの時も可愛かったけどね(笑)』

｢…もう二度と結弦の前で泣かない｣

『別にいいよ、違う意味でないてもらうから(笑)』

世界の羽生結弦がなんて事を…
恥ずかしくて顔から火が出そうだ

ばか、と言って離れるとだめ、と引き戻される
どんなに腕は細くてもやっぱり力は男性を感じさせる
瞬く間に結弦の前に引き戻されて抱きしめられる