【銀魂】【続】男装やめても一般人になれなかった件

第八十六訓 ページ38

男は、さっき開けた穴とは別に、また新たな穴を空けて店を去って行った。


その後ろ姿を取るだけ取った受話器を片手に持ちながら見つめていた。



そして、ようやく目の前の二つの穴の事態に整理がつく。


『…あんの野郎……』


空けるだけ空けて、弁償代も出さずに出ていったあの男。


こちとら毎日の生活費だけでいっぱいいっぱいだと言うのに！

弁償代払わせないと、気が済まない。



『絶対弁償させてやる！！！』



そう言って走り出す。



それはもう、今までにないほど速かったような気がする。


男の姿は見えないが、とりあえず走る。


この方向に、男がいる気がするから。



こういう時の勘って当たるんだよね。…多分。









…そして辿り着いたのが、ここだったのだ。

少々時間がかかってしまった。


何せ、道行く人に尋ねながらここに来たものだからね。


それにしても…


どうしよう。



『…うーん……ここに私は入れないし…っていうか入りたくないな』


入れたとしても、そこで男を見つけられたとしても、それはそれで最悪だ。

きっと男は最中だろう。


『帰る…？…でも…ここで引き返したらもう男に会えない気がするし…そうなったら弁償代が…』

修理費いくらするんだろ…

どう考えても十万はいく。余裕でいく。


その時点で私の明日のご飯はたくあんオンリー確定だ。


いや…たくあんすらないかもしれない。


『ど、どーしよう…』


…このままじゃ、だめだ。勇気を持て、私！


行くんだ！一歩を踏み出せ！


『明日からご飯なしなんて、クソくらえだァァァ！！！』


私は自分を勇気づけ、そう言いながら走り出した。









・









『…なんじゃこりゃ』

門の前…いや、門だったものの前に立って絶句する。


何と、門が…吹き飛んでいるのだ。



…そういえば、おかしな点があった。


私は今まで、百華を見かけていない。


百華は、吉原内の警備をしているはずなのに。


…というか、私は百華に追い出されるべき人物だろう。


だって吉原に、女が客として来てはいけないのだから。



『吉原桃源郷(ここ)で、何かあったの…？』


何だか…とてつもないことに巻き込まれそうな予感…。

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