絶対零度の死神

6人目　悩み ページ6

あれから数日経ったある日のこと。

「最近、お前元気ないよな。」

そう言ったのは、陸上部主将の河原。

「…そんなことないですよ。」
「誤魔化しても無駄だぞ。
　見てて分かるんだ。」
「…。」
「言い返さないという事は、そうなんだな?」

零一郎は諦めたかのように頷く。

「何かあったのか?」
「……。」
「…言いたくないほどか。」

黙って部室から出ようとする零一郎を、河原は腕をつかんで止めた。

「言ってみろよ。」
「…。」
「たまには人を頼ってもいいんだぞ?
　お前、いつも自分で何かを解決しようとしてるだろ。」
「……。」
「…言ってみ?
　案外、気持ちがスッキリすると思うぞ。」

零一郎はため息をつく。話す気になったようだ。









「…お父さんが、な…。」

真剣な顔で言う。

「嘘じゃないのか?」
「護衛の人が来たので、嘘じゃないとしか…。」
「…だな。」

すると、零一郎は頭を下げた。

「話を聞いてくれて、ありがとうございました。」
「おう。スッキリしたか?」
「…少しだけ。」
「あぁ。それでいいんだ。」

河原は微笑む。

「何かあったら、また相談に乗るぞ?」
「はい。そうします。」

そう言って、零一郎は部室を出た。









これが最後の会話になることを知らずに。

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