【旧バージョン】僕のクレイジーDAYS (ページ40)

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真紅の薔薇ふたつページ40

ふと目を開けると、僕は自分のベットの上に寝ていた。
くずかごに吐いた辺りで記憶があやふやだから、きっと誰かが運んでくれたのだろう。

結構何時間も寝ていたのかも知れない。
外は大分暗くなっていた。

不意に「コトン、」と耳元で微かな音がして、僕はベットの脇に目を向けた。

すると、何故かコノハヅキさんがそこに居て、キャンバスに真っ赤な薔薇の絵を描いていた。
「やぁ、リーハ君。悪いね、枕元で。」
コノハヅキさんは、僕が目を覚ました事に気付いていたようだった。
「いや、あの、別に大丈夫です。」
僕はいくらかまだボーっとしながら、コノハヅキさんの繊細な筆の動きをじっと見ていた。
コノハヅキさんも口を訊かなかった。
しばらく時計のカチコチいう音だけが部屋に響いていた。

「えっと、……コノハヅキさん……その絵の薔薇、なんか花びらがふわふわしていて可愛いですね。優しい感じがして……」
先に沈黙を破ったのは、僕の方だった。
だって、絵の薔薇はとても生き生きとしていて、香りさえ漂って来そうな程なんだもの。

コノハヅキさんは絵から目を逸らすことなく微笑んだ。
「そうかい？君にそう言ってもらえるとは…画家冥利に尽きるね。」

僕はまた、コノハヅキさんの座る椅子の側に立て掛けてあった、もう一つの赤い薔薇の絵を見つけた。
そっちの方は、サインらしきものが入っているので、もう完成しているらしい。

僕はその絵を見ているうちに、思わず胸がいっぱいになって溜め息をついた。
「……そっちの薔薇は、なんか力強い感じが綺麗ですね！同じ赤い色なのに、凄く迫力があって……」
「おや、君はなかなか目が肥えてるね。感性が豊かな証拠だね。」

コノハヅキさんは少し嬉しそうにしながら、また赤い絵の具に筆を浸した。
キャンバス上の一輪の薔薇は、コノハヅキさんが筆で触る毎に浮き上がって行く。
まるで魔法を見ているようだ。

「この絵も、今日中に仕上げるつもりなんだ。明日はギリシャに行くからね。」
突然コノハヅキさんがそんな事を言ったので、僕は驚いた。
「えっ、外国に行くんですか？」
「そう。ギリシャだけじゃない。一週間後にはローマにも行くし、その後はパリのエッフェル塔を見に行く予定なんだ。」
「えっ、なんか大変ですね。あの、お仕事で行くんですか？」

コノハヅキさんのお仕事が……殺し屋の方じゃないと良いけど……。