◇ ページ21
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2003年、1月頃。
大野side
「……？」
眉を顰めて後ろを振り返るA。やけに険しい顔をしているので直球に聞いた。
大「A、どうかした？」
「、いや、なんでも…舞台とかの疲れが出てるんだろうよ」
大「？何でもないならいいけど……無理しないでよ？」
Aは舞台やドラマの役にも頻繁に呼ばれていた。疲れているのは本当だろう。だから特に何も追求せず、この話は終わったのだ。
…今思えば、もっとちゃんと、追求していれば良かったのかもしれない。
＊＊＊＊
大野と歩いている中、Aは少し思案していた。
ここ最近疑問に思うことがあったのだ。
それは、時々感じる背筋が凍るような、誰かに見られてる感覚。
「(…いや、そんなドラマみたいな事あるわけないか。)」
大野にも言ったが、ここ最近の疲れが溜まっていたのだろう。
そう思考を終わらせて、大野の隣で動き出す。
────────その直後、Aの耳が僅かな音を捉えた。
ダダダっと走る様な音…それは、Aの後ろからだった。
「(？なんの音……)」
────────────グッ…
横腹に感じる、鈍い痛み。…刺されたのだ。鋭利なナイフで。
フードを被った奴がナイフを抜き、逃げていく。
生々しい音が漸く耳に届いた大野が、振り向く。
大「A……？」
大野の唇は、震えていた。もたつきながら、倒れ込んでいるAを支える。その唇は、既に青白くなっていた。
大「A、A……だめだよ」
血が出ている腰を、抑える。……つめたい。
「(あー…いたい…、わたししぬのか、？)」
月乃の視界に大野の泣きそうな顔が写る。
「(泣くなよ……わたし、お前の涙によわいんだよ。)」
そんなことを考えながら、目を閉じた。
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作者名：ちきんたつた | 作成日時：2023年9月23日 4時
