音の波紋を、雷へ第五章【イナズマイレブン】 (ページ39)

今日:125 hit、昨日:469 hit、合計:16,576 hit

◆ ページ39

.

―――――― 壊れるのは、一瞬だと知った。

その時から、風雅学園は着実にその強さを広めていった。
中でも特に名前が広がったのは、性別の垣根を越え、今は練習試合のみだが男子試合の中に混ざるという偉業を起こした神童Aだった。

ピーーーーー！！！

『また風雅学園の得点…！！』

『そして、それを決めたのは…』

観客達の視線が一人へと注がれる。
その本人はその視線を気にせず、仲間にもみくちゃにされていた。

『A、ナイッシューーー！！！』

『神のタクトもバッチリだったぜ！！』

『お前、活躍しすぎなんだよ〜！俺達も少しは目立たせろ、このこの！！』

『うわ、ちょっ、くるしいって…！』

そう言いながらも、笑うA。
試合を終え皆がベンチに戻ろうとするとトワの耳にある会話が入った。

『いやぁ、圧倒的だったなぁ風雅学園』

『…ま、そりゃそうだろ。なんせあの神童がいるんだし。』

『確かに〜あんな天才いりゃあ勝って当たり前って感じだよな。』

『ぶっちゃけ、観客も神童A目当てだしな。』

その言葉に、目を伏せるトワ。
後ろを振り返ったAが、キョトンと首を傾げる。

『…トワ？どうしたの、早く行こう。』

『』 …あぁ！わかってるよ！にしてもA、今日も大活躍だったなぁ〜！マジで俺らの期待の星！』

『そんな褒め称えなくても…それに、私が点を決められたのはみんなのおかげでもあるんだから。』

『…そっか。』

Aはベンチに向かって歩いていく。その後ろ姿を見たトワは、翡翠色の目をふ、と伏せた。

…その拳は、血が出るという程に握り締められていた。

―――――― その時のトワの様子を、ちゃんと見ていれば何かが変わっていたかもしれないのに。

.