何があっても…家族だから～第二章上～リメイク版 (ページ7)

今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:26,893 hit

＊39＊　決断＿ページ7

「…どうしてあの人は、そんなことをしたんでしょう。」

「さぁな。オレはザンザスと親しいわけじゃねえから奴の考えはわからねえ。ただ、お前に何かをさせたいのかもしれねえな。これは家光の受け売りだが。」

　…家光の。
　あの人とは何故か昔から縁があった。ザンザスに仕えていた頃から、もしかするとその前から、ずっと僕のことを気にかけてくれた。もっとも、彼が僕に向ける視線にはいつも微かに憐みのようなものが感じられて、僕はあまり好きではないけれど。それでも、信頼に値する人物であることはわかる。

「まぁ、どうするか決めるのはお前自身だ。正直雪のリングに関してはないものとして考えてたからな。お前が断ったところで大して差はないんだ。ただ、よく考えて決めろよ。この中でヴァリアー側の雪の守護者を知っているのはお前だけだからな。」

　…シランの話を出されると、正直気持ちが揺らいだ。大切なリングを、次代ボスの守護者たる証を、あんな女に渡したくないと思ってしまう。
　それに、ザンザスの意図も気になる。そもそも、彼はシランのことをどう思っているのだろう。少なくとも、よくは思っていないだろう。むしろ嫌いなタイプだと思う。ということはだ。こうは考えられないか。ザンザスが僕を並盛に住まわせるよう仕向けたのは、リング争奪戦で僕がシランに勝つことで、雪の守護者の座をシランに与えないため、とか。
　うん。あり得る。きっとそうだ。
　…自分に都合のいい解釈をしているのはわかっている。きっと僕は、心の奥底ではもう答えを出しているのだ。だから、”誰か”にする言い訳がほしい。そういうこと。

「…わかりました。そのご依頼、お受けしましょう。」

　そうして話がまとまりかけた、その時だった。

「ちょ、ちょっと待って！」

　…人が意を決して『やる』って言ってるのに、何なんだこの少年は。こんな時に横槍を入れてくるなんて、空気を読んでほしい。なんて、自分の新たな主になる人間に失礼か。それとも、僕が守護者になることに反対なのだろうか。