何があっても…家族だから～第二章上～リメイク版 (ページ24)

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＊56＊　夢3＿ページ24

それにしても、彼女は今『自分は魂』だと言った。つまり、それは家光から聞いた”もう一人の僕”ということで間違いないだろう。けれど、どうして今になって声が聞こえるようになったのだろう。

「貴方は今まで僕の声に応えてくれなかったのに、どうして今になって…？」

　そう聞くと、彼女は不思議そうに言った。

「声？そんなもの聞こえた覚えはないわ。どうやら、貴方にあたしの声が聞こえていなかったように、あたしにも貴方の声が聞こえていなかったみたいね。…何故だか、わかるかしら。」

　それは今僕が聞いたことだった。分かるはずがない。

「何故ですか？」

「貴方があたしを求めたからよ。あたしの力を、求めたから。だから、こうして少しだけれど”接続”できているの。」

「接続？」

　まるで機械のような言い方をする。

「そう、あたしは機械みたいなものだもの。求められれば求められるだけ応えて、けれど電池がなければ動かないブリキの玩具のようなもの。そしてあたしにとっての電池は、貴方の意思。」

　僕の、意思…？でも僕は今までずっとこの人と話したいと思ってきたけれど、それは叶わなかった。つまり、それとは違う”意思”だということか。会いたければ会える、なんて簡単なものではないらしい。そして彼女は、その”意思”がどんなものなのか教えてくれる気はなさそうだった。
　その時、視界がぐにゃりと歪んだ。

「自分で気づきなさい。貴方が気付かなければ、何も進まない。」

　彼女の声が遠くに聞こえる。

「そうして、今度こそあたしの目を見て。…きっとよ。」

　その言葉を最後に、彼女の声は途絶えた。

「っ！」

　飛び起きると、そこは見慣れた部屋だった。

「今の…夢じゃ、ない？」

　いや、夢なのだけれども。
　彼女と話したのは、きっと嘘ではなく本当だ。そう、なんとなくだが分かった。
　ふと窓の外を見る。あたりは真っ暗だった。

「…嘘？！」

　慌てて時計を引っ掴む。規則的な音を立てるそれは、リング戦がとうに終わりを迎えていることを告げていた。要するに、寝坊である。…寝坊でリング戦サボりましたとか、マジで笑えない。

「…はぁぁぁ…。」

　盛大にため息を吐く。本当、みんなにどんな顔して会えばいいんだ。
　困り果てる僕をあざ笑うように、あれだけひどかった頭痛はきれいさっぱり消えていた。